ベトナムのエビ養殖―その持続可能性をめぐって
利益をもたらすエビの養殖がメコンデルタに住む人々の生活の質を急速に変化させたが、その野放図な拡大は、環境やベトナム国内のエビの貿易に悪影響を与えている。
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15年前にベンチェ省南部の沿岸地域に住む農家の人々は、その好都合な環境条件から、稲作からエビの養殖へと切り換え始めた。この養殖が早いタイミングで成功したことや、高収入を得たこともあり、現地の農家の多くが養殖業に投資をした。数年後に同地域のトゥアンフォックは貧しい集落から裕福な土地に変わり、年商50,000USドル以上の家庭が急増した。
トゥアンフォックに住む農家のNgo Van Thu氏によると、当時に至ってこの土地はまだ開発されておらず、水資源が豊富で、この適した環境条件が養殖業の拡大に拍車を掛けたのだ。
その魅力的なまでの利益を理由にベンチェ省を含んだ、環境条件が適さない他の地域の農家までもが手当り次第にエビの養殖を始めた。バライプロジェクトにおける土地は淡水地であったため、現地の人々は自ら地面に穴を開け、海水を引き、養殖池を作り出したのだ。
養殖が急速に増加する一方、多くの場で条件が適さないこともあり、エビの病気が大流行した。その結果エビが大量に死に、生産者に莫大な損失をもたらしたのである。
Thu氏は約3年間操業を停止していると語った。「多く養殖すればする程、いっそう損失が出たのです。エビが原因不明のまま死んでいったのですから。」と同氏は話した。それでもなお、Thu氏の兄であるNgo Van Hung氏は去年2期にわたり養殖をやってみたものの、60,000,000ベトナムドン(2,700USドル)以上の赤字となった。
同様に、灌漑システムが不十分なチャービン省のデルタ地帯も、問題となっているエビの病気に悩まされている。
キエンザン省の農家のHuynh Phuoc Hai氏は「明らかなのは、深刻な環境汚染です。一つの水路に沿って多くの人が水を引き合い、エビが病気で死ぬ。今度はそれらの死骸を水路に垂れ流しにしました。そのせいで病原菌が拡散したのです。」と語った。
また、バクリエウ省で長く養殖を営むVo Hong Ngoan氏は「大きな損失の原因は、そういった環境汚染により多くの生産者が病気を防ぐ抗生物質を使用するためです。予防目的での抗生物質の過剰使用が経費を増大させると共に、薬品を過剰摂取したエビはもはや食品とはみなされません。」と述べた。
関連機関の統計によると、過去2年でベトナム産の32,000トンに及ぶ水産物(主にエビ)が、輸出後に薬品汚染が原因で返送されたのだ。
2015年に入って最初の9ヶ月間で、38ヶ国の国々が582バッチの海洋生産物を同じ理由でベトナムの生産者に返送し、ベトナム産の養殖エビに対する検査を強化する意向を示したのだ。
Ngoan氏は、様々な種類の抗生物質が販売されているが、生産者はほとんどその有毒性を認識していないと指摘した。他方で、加工工場が適切な検査をせずにエビを購入し続けるため、生産者はお構いなしに薬品を使用するようになる。
チャービン省の貿易産業省長官Tran Quoc Tuan氏は、エビ養殖における薬品使用の管理を強化し、生産者や加工工場に対して情報普及を高める取り組みを支持していると述べた。
彼は、国の管理機関は依然として生産者にその危険性を認識させなければならず、企業は安全な養殖環境を作るために生産者と協働することで、ビジネスのやり方を変えなければならないと指摘した。そうすることで、品質の高いものを養殖するために、稚魚、養殖法、給餌、そして薬品に至るまでが厳しく管理統制されるだろうとのことだ。
参考:http://www.eco-business.com/news/shrimp-farming-in-viet-nam-the-search-for-sustainability/