世界の食品ロス削減技術を集約したマップとは?
世界の食料の3分の1は捨てられると言われている。その重さはなんと13億トンだ。以前、消費者やスーパーマーケットなどによるアグリーフード(見た目の悪い規格外品)の大量廃棄が問題になっていることを取り上げたが、開発途上国ではこうした食品廃棄よりも収穫後から加工、流通までの間に発生する食品ロスのほうがかなり多いという。
今、世界中のさまざまな会社がこの食品ロス問題の解決に向け、技術を開発している。食品に携わる会社がこうした外部のさまざまな企業と協力し、積極的に食品ロス削減に取り組んでもらえるよう、食品ロス削減技術をまとめたマップ作りをしている団体がある。
グローバル・ロジスティクス・イノベーションズ・マップ
非営利団体のForum for the Futureは、グローバル・ロジスティクス・イノベーションズ・マップを作成している。世界初の食品ロス削減のためのオンラインマップだ。アメリカ穀物大手アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)が出資するイリノイ大学ポストハーベスト・ロスを防ぐためのADM研究所とイギリス機械学会が協同している。ちなみにポストハーベスト・ロスとは、農産物を収穫してから消費者に届くまでの流通過程で発生する損失のことである。
マップは、食品会社やロジスティクス会社が食品ロス削減に取り組むために利用できる技術を次の4つのイノベーションタイプに焦点をあてて世界地図上に表示している。
・コールドチェーン(生鮮食品を低温に保ったまま生産者から消費者のもとへ輸送する物流方式)
・パッケージング(商品の包装)
・ICT(情報通信技術)
・サプライチェーン構造
これら4つの分野の技術、製品、サービスを記載し、そのソリューションを提供する国やその開発段階、効果、連絡方法がわかるようになっている。
それぞれの分野には、たとえば次のようなものがある。
コールドチェーン
Ecozen Solutionsはインドで、小さな田舎農家のためのマイクロソーラーパワーを使用した冷蔵システムを設計した。現在では大きな生産者か中間業者しか冷蔵施設は利用できない。この冷蔵システムで農家でもより長く生産物を貯蓄できるようになる。
パッケージング
マサチューセッツ州のタフツ大学は、シルクフィブロイン(カイコの絹糸の主成分)の研究を進めている。果物のコーティングに使用することで冷蔵保存が必要なくなり、特にコールドチェーンが完全でない途上国などで食品ロス削減に役に立つ。
ICT
アメリカFedExのイノベーションチームはSenceAwareSMを開発した。これは包装されてから配達されるまで商品を管理するマルチセンサーデバイスで、位置情報などのデータを収集し、オンラインアプリに送る。このデータはフードサプライチェーンに欠陥がないことを保証し、商品が最高の状態であることを確認できる。
サプライチェーン構造
パナソニックはシンガポールで植物工場を建てた。パナソニックは農業を世界的な耕作地不足や気候変化、安定的な食料供給や高品質の食料需要の高まりから、潜在的な成長なものと見ている。国内で生産されたものを消費することでフードマイレージ、つまり輸送時の環境負荷を低減できる。
このようにマップには食品ロス削減に貢献する興味深い技術が集約されている。グローバル・ロジスティクス・イノベーションズ・マップは、食品ロス削減に取り組む企業だけでなく、環境問題に関心のある人にとっても注目すべきマップになりそうだ。
参考:http://www.eco-business.com/news/fixing-food-loss-with-disruptive-tech/