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2017年注目し続けたいインド・アグリテック・イノベーション5つの潮流

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This article was originally published on AgFunderNews, the online publication of AgFunder an investment platform for food and agriculture technology.


インドの2016年は、数多くのスタートアップ企業が猛烈なまでに自国並びに世界の農産業に対してソリューションを展開する年となった。農業や健康分野におけるテクノロジーに投資をする投資会社であるBharat Innovations FundのMathur氏は、2016年はインドにおけるアグリテックを巡る環境が大きく進歩した年だったと語る。

ここで面白いのは、そのうち何人かの農業起業家は、農業とは関係ないバックグラウンドを持っているということだ。農業という産業における明確なニーズとチャンスに引き寄せられ、農業界に持続的なソリューションを作り出そうという強い想いがその要因となっているようだ。また、機関投資家が設立間もない会社(Nubesol, BigHaat, MeraKisanなど)を支援し始めたのも2016年であった。
2017年にこのセクターはさらなる躍進を遂げると、Mathur氏含めたBharat Innovations Fundは信じている。現在の農産業のサプライチェーンのことを考えると、今後そのいかなる段階でもイノベーションが予測される。特に加工段階でのイノベーションが産品のイノベーションより早く起きると考えられる。加工段階でのイノベーションの例になるのは、農産品の集荷、自動化された農場設備、農場管理での新たなソリューション、有機栽培そしてキャトルファーミングである。一方で、農産品でのイノベーションに含まれるのは、生産性を高める土壌や、土や穀物をスペクトル分析できる機器、高精度の農業を可能にするセンサー・IoT技術などがある。
長く複雑なインドの農業サプライチェーンを、最適なテクノロジーをもってマネージしていけるかが、今後のベンチャー企業の成功の鍵を握るだろう。
今年はほぼ確実にアグリテック投資の変曲点になるはずだ。投資案件の増加と更なるベンチャーキャピタルの参画が予想される。実際に、食品系Eコマースベンチャー企業に対してそれまで投資を渋っていたベンチャーキャピタルも、既に現在はいくつかのアグリテック関連の投資案件を評価している最中にある。投資案件の中でも特に、テクノロジーを駆使した農作物集荷と精密農業は、他より大きな割合を占めることになりそうだ。
投資家の立場から農産業での好機について俯瞰してみると、以下の5つの傾向がアグリテック・イノベーションの分野に見うけられる。これらは2017年に農業セクターを引っ張っていくはずだ。

1. サービス業としての農業

「サービス業としての農業」(“Farming as a service (FaaS)”)という概念は、インドには、EM3 Agri Servicesという会社によってもたらされた。EM3 Agri Servicesは、農業機械を農家にレンタルし、使った分だけ利用料を支払ってもらうサービスを提供している。EM3 にはインパクト投資ファンドのAspadaが2015年に投資をしている。このFarmin as a serviceというコンセプトは業界の動向となり、他にもGoldfarm, Ravgo, Oxen Farm Solutions, FarMartなどのベンチャー企業が機材貸し出しのサービスを行っている。
インドにおける平均的な農家の土地保有面積は1.2ヘクタールしかなく、これは欧米の100〜1000ヘクタールには到底及ばない。そう比べてみると、農家は灌漑用ポンプや倉庫などの機材に投資するための収入を持ち合わせていないことが分かる。
この「サービス業としての農業(FaaS)」のおかげで、固定費用を変動費用に変えることが実現可能となり、農業関連設備への投資の必要性が削減される。小規模農家を対象に、必要な機材が手頃な価格設定で提供される。

2. 生産性向上のためのビッグデータ

インドの農業生産性は、世界平均の3分の1から半分にも満たない。これは一つに土壌の状態によるものとされている。複数の土壌調査によれば、インドのNPK率(窒素・リン・カリウム)は、著しく窒素に偏っている。これは尿素の使用レベルの高さが原因である。
そこで、個々の農場で、データに裏付けされた土壌の「健康診断」を行う技術を開発することは、大きなビジネスチャンスのある分野である。土壌の質の向上(土壌改良)するバイオ技術でも同様である。
更に言えば、例えばドローン、センサー、その他IoTテクノロジーなどを筆頭に、農作業の効率化およびサプライチェーンの効率化に向けてますます多くのビッグデータ技術が現在出現している。また、農家や、サプライチェーンの関係者の意思決定をサポートするデータアナリティクスも同様に増えてきている。CropIn, AgRisk, AgNext, Skymet, Stellaps, Airwoodがこのテーマで活動をしている企業の例である。

3. 農家の市場とのリンケージのモデル化

インドの農業市場は、他の市場と比べると、市場主導型というよりは供給者主導型と言える。これによって、まず第一に、季節によって産品の値段が急上昇する事態や非常に多くの食料廃棄物の発生およびサプライチェーン内でのバリューロスが引き起こされている。消費動向が似通ってきていることを考慮すると、農作物に対する需要は以前より予測しやすくなってはいるが、供給サイドの方がより変動しやすいのは事実だ。
毎年どの作物を育てるかという農家のチョイスは、しばしば作物の昨年の価格に左右されて行われる。特定の作物の価格をサポートする政府の政策も同じく影響を及ぼす。その含意は、農家の市場とのつながりのモデルケースを構築できる好機があるということである。となると、消費者側の需要パターンに従って種蒔きや収穫をタイミング良くかつ正確に予測をするためのイノベーションが農家側で必要になってくる。その最も良いソリューションはおそらく、「ビッグデータ」×「集荷」だろう。Sabziwala, MeraKisan, Dehaatは、園芸業の分野において成功を収めたベンチャーの一部である。

4. フィンテックを農家にも活用

およそ600億ドルに及ぶのだが、インドの農家が受け取る融資の約3分の1は、非正規の金融機関が出所になっている。一方で、正規の金融機関による融資ルートの数が増えている中、フィンテックのポテンシャルは見逃せない。フィンテックによって金融機関は融資先の農家についてより良く理解できると共に、彼ら農家の財政的信用度についてもより賢明に知ることできる。ほとんどのインドのベンチャー企業はこれまで都市エリアに重点を置いてきたが、今こそ農村部にあるこのようなチャンスに目を向けるタイミングである。
そうすることで農家への融資を更に効率的にし、結果として農業セクターによってもっと金融が利用される。
インド政府による2016年11月の一部通貨廃止と、それに付随する、現金流通の不足がもたらした農業産品貿易への影響の著しさのために、いかに農業分野での取引のデジタル化が必要か我々は分かることとなった。農家の収入の過半数は現金で入るが、これはすなわち農家の口座にリンクした電子取引サービスを通して、彼らへの支払いをデジタル化するチャンスがあることを意味している。農家にもスマートフォンが拡大してきていることを考えると、そのようなチャンスは農家と取引相手を結ぶアプリやプラットフォームという形で実現し得るだろう。現地の言葉を使った、分かりやすく安全なアプリこそが、農村部へのスケールアップのための方法だ。

5. 酪農や園芸農業のサプライチェーンモデル

インドでは、穀物産業より酪農や園芸農業の方がより速く成長を遂げている。牛乳の生産量は約1億5千トン、園芸生産量は約2億7千トンに及ぶ。インド史上初めて園芸農業での生産量が食用穀物の生産量を追い越した。ミルクと園芸業のサプライチェーンを最適化する必要性があるのは明白だ。
品質を保ち、廃棄物を減らして、トレーサビリティーを向上させつつ、貯蔵寿命の長い集荷・配送・保存を実現するソリューションが求められている。農家から消費者への牛乳のサプライチェーンのモデルである LaVeda, Farmery, Puralite, 4S Foodsなどの会社には、既にそのサプライチェーンを革新し、事業を都市部から地方へ拡大するための土台ができている。
農業分野のサプライチェーンにおける投資は平均すると、最近5年間では1年あたりおよそ2億5千万ドルである。Mathur氏らは予測するには、以上5つのアグリテック・イノベーションの潮流により一層の重点が置かれることによって、この値はまた飛躍的に大きくなると考えられる。
インドにはイノベーションへの資金流入および優秀な起業家達の才能が更なる革新を生み出す見通しがある。これらを土台にインドの農業は2017年に大きく飛躍する準備が整っている。

 

LINK:https://agfundernews.com/five-trends-in-agritech-innovation-in-india-to-watch-out-for-in-2017.html

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