STOP食料廃棄 シンガポールのアグリーフード・キャンペーン
1日アフリカゾウ360頭分の食料廃棄
チキンライス、ラクサ、チリクラブ。どこかで耳にしたことはないだろうか。これらは最近日本でも人気のシンガポール料理だ。ここ数年でシンガポール料理の店が次々とオープンし、スーパーマーケットではレトルトのチキンライスやカップ麺のラクサが販売され、日本にいながら南国の味を簡単に楽しめるようになった。シンガポールには、これら以外にも多民族国家ならではの料理が数えきれないほど存在する。
しかしその一方で、毎日食べ物が大量に廃棄されている。その重さは、なんと年間78万8600トン。1日に廃棄される量は、現存する陸上動物最大と言われるアフリカゾウ360頭分の重さに匹敵する。
「盛り過ぎ」「残飯嫌い」「見た目重視」
大手家電メーカーのエレクトロラックス・シンガポールは、18-65歳のシンガポール人1000人を対象に食料廃棄に関する調査を行った。これによると、家庭で食べ物を捨てる主な理由には、賞味期限切れ(48%)のほか、「皿に料理を盛り過ぎた」(51%)や単に「残飯が嫌い」(29%)といったことが挙がった。
またシンガポール人は、食材を買う際もこだわりを見せる。調査対象の半分以上が食材の見た目を重視し、食料廃棄について考慮していないと答えた。83%の人はきれいな見た目の野菜や果物を買い、4人に1人は見た目の悪い食材は絶対に買わないと答えた。エレクトロラックスは、こうした美食家であるシンガポール人の姿勢を変えるため「アグリーフード・キャンペーン」を実施している。
アグリーフード・キャンペーン
傷があったり、色が悪かったりと、見た目の悪い野菜や果物のことをアグリーフード(ugly food)という。ただ見た目が悪いというだけで、味も栄養素もきれいなものと変わらない。
このアグリーフードの認知度を高め、消費者に購入してもらおうと、エレクトロラックスはソーシャルメディアで写真コンテストを行う。コンテスト参加者は#UglyIsTheNewGoodあるいは#happyplateSGというハッシュタグをつけてアグリーフードを使った料理の写真を応募する。このハッシュタグ付きの写真が8つ投稿されるごとに、エレクトロラックスは非営利団体であるフードバンク・シンガポールのトラック1日分に資金を提供する。このトラックは、各地で余っている食料を集め、シンガポール中の必要とする家庭に再分配する。
エレクトロラックスの調査では、46%もの野菜・果物が調理されずに捨てられるということもわかった。また、65%の人々は、もしアグリ―フードがきれいな野菜・果物よりも安く売られていたら日々の食事に使用するとも答えている。フードバンクの役員は、「アグリーフードは広く調査・論議されてこなかった食料廃棄に貢献する要素の一つだ」と言う。
消費者は見た目のきれいな野菜や果物を求めがちだ。確かに美味しい料理を作るには見た目の良い食材を使うことが有効かもしれない。しかし、調理の仕方次第で必ずしもきれいな食材が必要となるわけではない。食料廃棄削減や生産者の気持ちを考えて、我々もアグリーフードに関心を持ち、見た目重視の意識を変えてはどうだろうか。
参考:http://www.eco-business.com/news/can-ugly-food-be-the-new-good-in-singapore/