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インド:双子でオーガニック野菜を広める HASORA八田飛鳥さん

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八田飛鳥(はった あすか)さん

千葉県出身。カリフォルニア州立大学チコ校の国際関係学部卒業。
日本帰国後、起業家支援会社で社会起業家支援プログラム等の担当を行うなど、特にアーリー・ベンチャーを中心とした起業支援に携わる。2013年よりリクルートホールディングスの海外法人であるRGFインドにジャパンデスク事業立ち上げメンバーとして入社。
日系企業を中心にインド人・日本人双方の採用支援に従事。
2016年5月より、オーガニックフードをインドに広めるべく、双子の姉と共にオーガニック野菜の宅配販売会社の HASORA (ハソラ)を立ち上げる。インド生活5年目。

HASORAの事業

「安全で健康な食を通じて人々の生活を豊かにしたい。」を理念に、契約農家で生産された無農薬野菜や果物のデリバリーサービスを提供しています。昨年より、自社農園も開始し、無農薬の日本野菜の生産も行なっています。今後はオーガニックサラダやヘルシーランチ、お惣菜の提供も予定しています。特に野菜不足のビジネスパーソン向けの新サービスを開始予定です。


HASORAには2つの意味が込められています。一つは、「人を笑顔にさせる人」というヒンディー語。もう一つは日本語の「葉」「空」です。どんな時もそこにある必要不可欠な「空」、上に向かって常に成長する「葉」。また青空は人を元気にさせるエネルギーも持っています。HASORAはそんな存在になりたいという願いを込めた名前です。

➖そもそもなぜ農業に興味を持たれたのでしょうか?

私自身は千葉県出身ですが、子どもの頃から山梨の祖父母の家に行くのが好きでした。祖父母は長い間無農薬野菜を育てていて、行くとその野菜で祖母が美味しい料理を作ってくれたんです。それが大きく影響していると思います。

➖それで無農薬農業なんですね。なぜインドをフィールドに選ばれたんですか?

まさに、インドではこれから「健康・食の安全」への意識が高まり、著しく成長すると感じたためです。まだまだ課題がたくさんあり、困っている人が多くいたので、チャンスがあると考えました。

インドでは道端を歩いて周りの八百屋を見ると野菜は新鮮でないものばかり。
高級スーパーでさえもしなびた野菜が売られています。日本なら産地や生産者の情報など、消費者が知ることが今では当たり前になってきました。でもインドではそういう習慣がなくて、誰が作ったかわからないものを食べ、どんな農薬が入っているかもわからない。それがインドの現状なんです。

インドに来た当初、スーパーで買った野菜が一週間腐らないという事があって驚きました。不自然な艶があり、野菜の香りがほとんどしないことにずっと違和感を感じていました。インドの食の安全性についての意識はまさにこれからです。新鮮で美味しい食材があり、美味しい食事を家族で食べるという幼少期の自分の“当たり前”をインドでも実現したいと思ったんです。

➖元々起業は考えておられたのですか?

大学生の頃から、いつかは起業したいと考えていました。HASORAを創業する1年前くらいから悩んでいましたが、最終的なきっかけになったのは大好きな祖母が急に他界した事でした。今まで元気だった祖母が突然です。誰も、初めは受け入れられませんでした。
人生短く、いつ何が起きるかわからない。であれば、後悔しない生き方をしよう。今まで祖父母や両親が、当たり前のようにずっと与えてきてくれた「安全で美味しい食」「食を通じた幸せな時間」が私の原点だということが腹に落ちた瞬間でした。そして、覚悟が出来、会社を退職し起業しようと決意しました。

➖大学時代から、双子のお姉さんと起業しようと考えておられたのですか?

大学時代には二人で起業しようという話は一度もしたことがありませんでした(笑)
ただ、小さい頃からお互いの興味関心はいつも似ていました。
やはり祖母の死を経験し、人生をかけてやりたい事が
腹に落ちた時、姉も同じようなことを考えていました。
そうであれば一緒に始めようと。私たちにとってごく自然な形でした。

➖さすが双子ですね。御社の事業においても息ぴったりなのでしょうか?

そんなことないですよ。ぶつかることもたくさんあります。でも、姉妹だからどんなにぶつかっても絶対的な信頼関係があります。
また、姉の方がインド経験が長いので、インドの知識やインド流の仕事の進め方など学ぶ事が多々あります。また、ヒンディー語にも助けられていますね。

➖やはりインドでの仕事は日本とは大きく違うのでしょうか?

そうですね。仕事面において「信頼」を構築し、課題や問題点に対して、ソリューションを提供する。そして、喜んでもらい対価を頂くという仕事の基本はどこでも一緒です。
ただ、アプローチや進め方においては、異なる点がたくさんあります。
インドの「当たり前」と日本の「当たり前」は異なる部分がたくさんありますからね。インド流も知らないとここではやっていけないと思います。
しかし、日本人としての強みも自覚しながら、常にどうすればより良いものが出来るから考える事が大切ですね。

とにかくインドは時間がかかる事が多い、何回いっても変わらない。
担当者の言ってる事が毎回違う。頼んだものが来ない。

まだまだ、びっくりする事がたくさんあります(笑)

でも、自分で変えられないことを嘆くより、変えられる事にいかに注力出来るか。インドでは特に大事な点だと思います。

➖確かに大変そうですね。インドの食農分野における課題は何でしょうか?

大きく分けると2点あります。

1点目はロジスティクスの問題。気温が高いのにクール宅急便のようなものはまだインドではほとんどありません。
また、中間業者も多いので、消費者に届くまでに数日かかってしまいます。新鮮な野菜を届ける事がとても大変なんです。また中間業者がたくさん入って管理もされていないので、店頭に並ぶ頃には、誰がどこで作った野菜か誰も知らないという状況になってしまうんです。

2点目は、農家さんが安全で美味しい野菜を作っても、正当に評価する仕組みがないことです。今のインドの一般的な野菜市場では味と安全性を追求しても、野菜は高く買ってもらえません。
また農家はギリギリの生活をしているため、少しでも収入をあげるために、薬を使って野菜を大きくしたり、腐らないように薬の液体に野菜をつけることもあります。

➖インドで農業、かなり大変そうですが、HASORAの事業の強みはなんですか?

安全性と鮮度です。現在10軒ほどの契約農家と自社農園で無農薬野菜を栽培しており、安全性を保っています。また収穫して24時間以内に届くようにしているので、新鮮な野菜を楽しんでいただけます。

➖御社事業の課題と展望についてお聞きしたいです。

課題は安全で美味しい野菜確保とロジスティクスです。
信頼出来るパートナー農家さんの開拓を進めていますが、農家さんとのネットワーク構築は、予想以上に時間がかかっています。また、インドでは買えない日本野菜など、より多くの付加価値の高い野菜をより大きな規模で栽培するために準備を進めていますが、農地の選定や信頼出来るパートナー探しにも時間がかかっています。また、各地で生産している野菜を都市部までスケジュール通りに、運ぶことも課題の一つです。ロジスティクスが整備されていないインドでは、運んでいる途中になくなったり、盗まれたりする事が少なくありません。鮮度よい状態で、インド各地から都市部にいかに効率よく持ってくるか。
これは、これから更に強化する必要があります。
展望はインド全土でHASORAの名を轟かせることです。
そのためには、圧倒的な信頼と商品力が必要です。
具体的には、パートナー農家とお客さんとの信頼関係の構築、日本野菜など付加価値の高い野菜や加工品の提供、利便性の向上です。また、モバイルアプリからの注文や職場で食べたい時に美味しい野菜が食べられるようなシステムを作って利便性も向上させたいですね。今年度からオフィス向けの惣菜販売の事業も考えています。日本野菜の提供も広めて日本の農業技術や美味しい食材をインドでも楽しんでもらえたらと思っています。そしてゆくゆくは、個人の体の状況や悩みに沿って、食も含めたトータルヘルスケアのサポートもできたら面白そうだなと考えています。

➖今後の発展が楽しみですね。インドは大変そうな国ですが、どんなところが好きですか?

可能性があるところと多様性があるところですね。本当に面白い国です。4年経っても、笑っちゃう事がたくさんあって飽きません。日本ともアメリカとも違うし、カオスな面も多いですが、歴史があるので奥深いです。
元々挑戦や変化が好きなタイプなので、インドの環境はエキサイティングですね。まぁそうでなきゃインドは選んでないですね(笑)

➖今、楽しいですか?

うーん、正直まだ焦りや不安の方が大きいです。全てがうまくいっているわけではないので。でも、明日死んでも後悔しない生き方がしたいんです。その点では今の選択には、迷いはありません。
自分が心の底からやりたいこと、好きなことを今、健康な体で全力で出来る。
そして、両親や周りの方が応援してくれています。
それは、とても幸せなことだということは忘れてはいけない。
大変な事もありますが、自分の進むべき道という確信はあります。感謝されたり、美味しかったよと言われたり、小さな事がすごく嬉しいです。また同じ思いの人との出会いが前よりもっと多くなりました。そういうのはすごくエキサイティングですね。ワクワクする事がたくさんあります。

➖最後に八田さんご自身の夢を教えてください。

HASORAに出逢えたから、人生や生活が変わったと言われる存在になりたいと考えています。Facebookは従来のコミュニケーションの形を変えました。Uberは、移動をより便利にしました。
私たちは、食でいうFacebookやUberのような革新的な存在になりたい。
インドに今までなかった新しい事、人の役に立つことを提供するのが夢です。関わる全ての人が幸せになるサービスが作れたらと思います。食農分野での取り組みで人の笑顔をもっともっと作りたいです。

インターン生募集中!

HASORAでは現地インドでのインターン生を募集中です。

一緒にインドの食農分野に取り組みたい!八田さんと働きたい!チャレンジがしたい!

そんな学生の皆さんは info@hasora.in にご連絡ください!

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