ChemChina(中国化工集団)がシンジェンタを買収
過去最大の買収
1月に本メディアで中国の国有化学メーカーChemChina(中国化工集団)が世界最大手の農薬メーカー、シンジェンタに買収案を提示していることを紹介した(参照:シンジェンタのM&A これまでの動きを総まとめ)。そして今月3日水曜日、ついに中国化工集団とシンジェンタが買収に合意した。
買収額は430億ドル(約5兆1600億円)となる見通しで、中国企業による海外企業買収では過去最大となる。確かに近年、中国企業による海外企業買収は規模(額)と数の両面で増加傾向にあった。しかしシンジェンタの買収が実現すれば、今までで最も大きな買収であった2012年のCNOOC(中国海洋石油総公司)によるカナダのエネルギー会社Nexenの買収額、177億ドルを遥かに凌駕する規模の買収となる。
買収の背景
史上最大の買収の背景には食料安全保障を確保しようとする中国政府の強い姿勢が伺える。大躍進政策で推定2000~5000万人もの飢餓者を出してしまった経験がある中国共産党にとって食料安全保障は常に重要な政治課題であった。しかし1996年に「95%の食料自給率の維持」という目標を掲げたものの、2008年以降は食料自給率95%を恒常的に下回ってしまっていた。
その理由の一つとして、中国の食の高度化に伴う食料需要の急激な増加があげられる。中国はこの10年間急激な経済成長を記録している。2005年に1750ドルだったGNI per capita は2014年には4倍以上の7400ドルにまでに増加した(世銀参照)。これに伴い食肉の消費量が急激に拡大した。中国の1人当たり年間食肉消費量は90年代末に日本を上回り、さらに2008年に韓国を上回った。これに伴い、飼料の輸入が増加したのである。
また生産面にも不安を抱えていることも買収を促したと予想される。中国はでは耕地や水資源の汚染が深刻な問題となっており、農作物の生産に及ぼす影響が懸念されている。