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農業におけるオープンイノベーションの必要性

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Editors Note: This article was originally published on AgFunderNews, the online publication of AgFunder an investment platform for food and agriculture technology.

※本記事の筆者Joseph Byrum氏は、ライフサイエンス領域におけるR&D及びストラテジックマーケティングの役員である。本記事は農業のオープンイノベーションについてByrum氏が執筆した3部シリーズ中の初回記事である。


 

オープンイノベーションが農業の新たな時代を形づくろうとしている。農業は他の産業に比べて、より技術的な遅れを取り戻す必要のある産業だとわかってきている。ドローンやセンサー、データアナリティクスなどを用いる高い技術システムの進歩は、従来の農業になかった専門技術の需要を生み出し始めた。結果的に、オープンイノベーションを利用して来なかった農業関連企業のほとんどの企業も、10年以内には利用するようになるだろう。残りの企業もそう時間はかからないはずだ。

この理由はシンプルである。発達したテクノロジーは競争優位を生み出すからだ。例えばシンジェンタでは、大豆の種子のためのデータアナリティクスツールが収量を2倍化させることに貢献している。これは実地試験でも、少ないリソースでより良い結果をもたらし、競争の激しい市場で自社製品にエッジを効かせるのに大いに役立った。

農業のみに関連した技術に留まらず、境界線を広げ、競争の先を行きたいというニーズが存在する。このレベルのイノベーションには、人材と専門技術に対する十分な投資が必要とされる。技術志向の人々を適切にミックスさせるのは、ローテク技術を改良することに比較的焦点が置かれている農業という業界では特に難しい。

幸いなことにオープンイノベーションがその解決策になる。クラウドソーシングとも知られるオープンイノベーションは、ビジネス課題をオンラインで幅広いコミュニティーに投稿し解決してもらうことで、新たな発想を生み出す方法だ。これは従来のように社内で課題を解決しようとスタッフを新たに雇用する方法の代替策である。

オープンイノベーションは世界を常に変化し、最高の人材はもはや北アメリカだけでは見つけることができないということを前提としている。OECDの統計によれば、科学技術の学問領域の卒業生が最も増えているのは中国とインドであって、アメリカではないのである。

どこに住んでいるのかは関係なく最も優秀なタレントを見つけることは、これまでの雇用の方法では採用することのできなかった人材にアクセスできる有効な手段となるのだ。

例えば、昨年我々が用意した世界が抱える問題について500人もの参加者を世界中から集めて行ったSyngenta Crop Challengeがある。これは多くの参加者が解決策を探そうと試みる非常に有意義なものであった。なぜなら、広い範囲で人材を探すことはしばしば良い結果をもたらすことがあるからだ。課題に対してすべての人がユニークな側面から向き合うことで、ラテラルな思考が新しく素晴らしいソリューションを提供するのだ。チャレンジのファイナリストには、我々から賞金を送った。

ひとつのプロジェクトに対して人事部を通じて500人の応募者を集めるのと比較してほしい。さらに悪いことに、新たなプロジェクトを始める時やプロジェクトを1からやり直す時、そのプロセスを繰り返すことを想像してほしい。確かに十分な数の専門家を雇うことは可能だが、必ずその人たちは正しい答えにいつもたどり着けるとは限らない。そしてその正しい答えを生み出そうともそうでなくとも、彼らにサラリーを支払う必要があるのだ。

もちろん、先述した「幅広い」人材の集合がいつも問題に対して価値を提供するとは限らない。時に、問題が非常に複雑なために、「深い」専門知識の人材を集めてチームベースでアプローチする方が良い時もある。その時には同様に、チームベースの環境により適した専門家を集めるのに特化したオープニノベーションプラットフォームがあるのだ。

農業関連のあらゆる会社は自社の能力を高めるためにこう言ったオプションを利用する必要がある。シンジェンタのビジネスはサイエンスの最先端を行き、最先端の研究所や遺伝子やバイオロジーに関して卓越したスタッフもいる。しかし、精密農業の力を引き出すのには十分ではない。データアナリティクスツールを構築する時、ソフトウェアエンジニアが必要となる。アルゴリズムを開発するためには数学に強い人物が必要になるのだ。

我々のデータアナリティクスプロジェクトに関わる外部のチームは、彼らは農地に一度も足を踏み入れたことがないにもかかわらず、非常に高い価値をもたらしている。広い範囲での農業に対する人材の集合は、確実に今後10年で業界が必要としているし、これはオープンイノベーションなしではあり得ない。

これが問題解決に対するイノベーティブなアプローチに関して明るい未来があると言える理由である。必要な時に正しいタイプの人材を採用するメリットは見落とし難い。市場状況に合わせてそういった人材を必要とするため、その方が早いのである。コスト効果もその方が高い。すでにオープンイノベーションは農業におけるR&Dの生産性と効率の向上という点で次なるフロンティアとしてスタートしているのだ。

 

Link: https://agfundernews.com/case-open-innovation-agriculture.html

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