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シンジェンタ、ASEAN4ヵ国の食料供給安定性を数値化

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先日の相次ぐ台風により北海道などの地域で農産物に大きな被害が出た。ニンジンをはじめとする野菜の供給不足や価格の高騰など、我々の生活に大きな影響を及ぼしている。日本は台風や地震といった自然災害が多く、こうした不測の事態が起こった場合にも十分な食料供給ができるようにしなければならない。また、多くの食料を輸入に頼る日本は、輸入先の干ばつなどの天候不順や紛争などにより輸入ができなくなるという恐れもつきまとう。こうした中でも安定して食料を供給していけるようにすることを食料安全保障という。

食料安全をはかる新たな指標:RBI

食料安全保障の「強健度」をはかる目安にRICE BOWL INDEX(以下RBI)というものがある。農薬大手のシンジェンタ・アジア・パシフィックと情報アドバイザリーサービスのフロンティア・ストラテジー・グループが先頭に立ち、2012年に正式に発表した。現在は15か国の食料安全保障の強健度をRBIで示している。同じ指標を用いることで他国と比較することができ、各国の食料安全保障の強みと弱みが見えてくる。

RBIは、「政策・貿易」「農場レベル」「環境」「価格・需要」の4つに分野を分け、それぞれ7~10個の項目をもとに100点満点で表す。たとえば政策・貿易分野には、「ビジネスのしやすさ」や「政治が安定し、不当な権力の行使・テロがないこと」などの項目があり、その国の政策や貿易が自由競争や投資、イノベーションを促進するかが点数化される。

そのほか、農場レベル分野は、農家が長期にわたって生産的な能力や手段を持っているかを耕作地面積や穀物収穫量などに加え、成人の識字率などをもとに点数化している。また、環境分野では、環境容量が長期にわたって持続的に生産できる力を備えているかを点数で表す。項目には、極端な天候や海面上昇、農産物の損害に対する脆弱性や再生可能な水資源などがある。そして価格・需要分野は、質や手ごろな価格、購入手段の観点から食料安全保障のニーズがどう変化しうるかを評価する。これは、国内食料価格水準の指標や食料供給量、1日当たりのカロリー数などからはかっている。

こうしたRBIの点数を見ると、国の食料安全保障の問題点や政府が介入すべき点が見えてくる。そして食料安全保障の強健度を向上させる方法を提案することができる。東南アジアではインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの4か国のRBIがすでに示されており、それぞれの強みや弱みが見える。

ASEAN4か国のRBI

シンジェンタ・アジア・パシフィックは、東南アジア4か国のRBIを次のように分析している。

・インドネシアのRBIは環境分野が高い。国内の再生可能な水資源の豊かさや生態系の活力という項目の数値が高いためだ。しかし、一方ではビジネスが比較的しにくい状態にあり、農業を成長させるための投資を思いとどまらせてしまっている。

・フィリピンのRBIは、価格・需要分野の点数が低い。これは15か国のRBIのうち12番目である。他の分野より高い点数の環境分野も15か国中9位であり、全体のRBIは12位となっている。食料安全保障を向上させるため、フィリピンはRBIの各分野に集中して取り組んでいかなければならない。

・タイのRBIは環境分野と価格・需要分野で高く、農場レベルで低い。インドネシアの62%でしかない穀物の収穫量を改善すれば、農場レベルの点数を上げることができる。

・ベトナムのRBIは農場レベル分野で押し上げられ、環境分野で押し下げられている。ベトナムは土地活用を向上させ、投資やテクノロジーを採用してきたことで主要なコメの輸出国になっている。しかし、他国と比べて特に海面上昇に対して脆弱性があり、気候の変化には注意が必要である。

このようにしてRBIを用いると、国家の食料安全保障における強みと弱みがわかり、政府の対策方法を提案することができる。日本ではまだ認知度が低いが、RBIは安定した食料供給を実現するための一つの指標として活用していけるだろう。

 

参考: Efficient Agriculture, Stronger Economies in ASEAN – Private Sector Perspectives for Policy Makers

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