ベトナム:稲作副産物「もみ殻」バイオマス燃料製造に企業参入の流れ
ベトナムでのもみ殻バイオマス事情
これまでベトナムでは、もみ殻は保冷剤もしくはレンガ炉・蒸留所で燃料として利用され、灰は肥料として農地に還元されていた。しかし、近年環境にやさしく効率的なバイオマス燃料として利用され始めている。
※もみ殻とは、コメの乾燥精米工程において、籾すり(乾燥後のもみから、もみ殻が剥がされ玄米になる工程)の段階で発生する稲作副産物である。
2010年から2016年にかけて、メコン川流域におけるコメ生産量は2,000万トンから2,500万トンへ急速に拡大しており、もみ殻に換算すると年間あたり400〜500万トンが発生している状況だ。
もみ殻は、数年前までは50〜200ベトナムドン/kg(日本円換算約0〜1円/kg程度)で取引されてきたが、現在では700〜800ベトナムドン/kg(日本円換算約3〜4円/kg程度)まで相場が高騰している。
各社のもみ殻売買動向
Hoang Vinh Phu社 のTruong Hoang Van氏によると、企業目線においても、もみ殻から薪を製造する事業が採算に合う段階にきているという。もみ殻が、コメの乾燥精米工程において、籾すり機から排出され、そのままタンクを経由し、すぐに薪の製造装置に投入されることで、コストを抑え利益が最適化されるという。同社のもみ殻プレス工場では、毎日400〜500kgのもみ殻薪が製造され、1300〜1500ベトナムドン/kg(日本円換算約6円/kg程度)で販売されている。
また、もみ殻の輸出を行う企業も存在し、毎年約4万トンのもみ殻が輸出されている。例えば、Mai Han社(Can Tho市)は、韓国・日本・カナダ・アメリカのそれぞれに対して毎月20トンのもみ殻を輸出している。
Hoang Huynh社(Tien Giang省)では、もみ殻薪から炭を製造している。3トンの薪から1トンの炭が製造でき、5,000〜5,500ベトナムドン/kg(日本円換算約22〜25円/kg)で、国内の地下鉄運営企業へ販売されるほか、韓国やタイ、アメリカに輸出されている。同社によると、毎月6,000トンものもみ殻炭を地下鉄運営企業に販売しているという。
もみ殻薪を活用したい企業側は、もみ殻薪に適合する燃焼ボイラーを導入する必要がある。化石燃料の代替としてもみ殻薪を利用できるようになることから、ランニングコストが大幅に低減でき投資対効果を高めることができる。
IEV Vietnam社はCan Tho市にもみ殻薪工場を建設する。これにより、メコンデルタにおいて初めて企業によって大規模なバイオマス燃料製造工場が建設されることになる。この工場は、もみ殻が大量に発生する30箇所の乾燥精米工場の近隣地に建設される。