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【写真で見るタイの食料事情】Talad Thai 東南アジア最大級のマーケット

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タイの首都、バンコクのドンムアン空港からほど近い場所に位置するTalad Thai(タラートタイ)。ここは東南アジア全体で見ても最大級の規模を誇る卸売市場だ。日本でいうところの大田市場(東京都中央卸売市場)や築地市場がこれに当たると言える。

その規模はおよそ250エーカー(約101.1ヘクタール)にも及び、東京ドーム約21個分の広さにもなる。東京都中央卸売市場の面積の約2.5倍という広大な敷地に、国内外産問わず野菜、果物、水産物、畜産物などが並んでいる。広大な敷地にはいくつもの建物が並び、果物、国内産野菜、輸入野菜、水産物、畜産物といった具合に種類ごと建物が分かれている。

今回はTalad Thaiの様子をお伝えすると共に、タイの食料事情を紐解いていく。

タイの輸入果物の中心はやはり中国産

タイは熱帯モンスーン気候であるため、マンゴーやパパイヤ、パイナップル、ココナッツといった南国果物の栽培は盛んで、輸出量も非常に多い。一方でタイ国内ではなかなか生産するのが難しい果物の輸入量は多くなっている。

また高所得層の増加に伴い、こうしたフルーツ需要が高まっていることも輸入量が増えている一つの要因だろう。農林水産省によるとタイの輸入量の多い果物は、リンゴ、ブドウ、ナシ、柑橘類で、以下の図からわかるようにその過半数が中国産だ。

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資料:JETRO資料を基にAGRI in ASIAが作成

実際に果物売り場を見て回っても、かなり多くの割合を中国産が占めていると感じたのが正直な感想だ。それ以外にはアメリカやオーストラリア、ニュージーランド産のものが輸入果物の大部分を占めている。こうした果物は、中国産のものは主に海上輸送で、日本やアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド産のものは基本的に空輸でタイに届けられる。ただリンゴは他の果物に比べて日持ちするため、海上輸送を用いる場合もあるとのことだ。

次にこれら果物の輸入価格を、以下の図で見てみる。

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資料:JETRO資料を基にAGRI in ASIAが作成(1バーツ=3.13円で計算)

一方で輸入単価を見てみると、日本産のリンゴは中国産の6倍、ブドウにいたってはなんと25倍もの輸入単価がついている。タイ国内での日本産果物は、富裕層のごく一部に食されるか、または贈答品として送られるプレミアム商品と認識されている。実際バンコク市内の高級スーパーマーケットで、日本産のリンゴ「ふじ」が1個150バーツ(約470円)で販売されていた。こうしたプレミアムものはTalad Thaiのようなマーケットを介さずに、直接仕入れる場合も多いそうだ。また中国の旧正月のシーズンは贈答品が多く出回るため、日本産果物の価格はさらに上がるのだという。タイ国民が好む果物は甘くて大きいものであり、日本産の果物にもそれを望んでいる。見栄えの良さ、味の良さで日本産の果物は差別化されているようだ。

中国産のばかりのリンゴ売り場の中に青森県産のリンゴを発見(中央奥)
中国産が多いリンゴ売り場の中に青森県産のリンゴを発見(中央奥)
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柑橘類も輸入量が多く、柑橘類だけでエリアが1つできあがっている

 

農業大国タイ、野菜は豊富に揃う

タイ農業の中心はコメだ。タイ中心部を流れるチャオプラヤ川流域も土壌が肥沃なため、この一帯ではコメの生産が盛んである。主要農作物はコメ以外に、キャッサバ、サトウキビ、トウモロコシなどだ。そのため、穀物自給率は148%(2011年)と非常に高い。国土の40%以上が農地で、GDPに占める農業の割合は10%(日本は1%程度)に上り、まさに農業大国と言える。

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広大な敷地に並ぶのは全て国内産の野菜

タイは熱帯に属するが、雨季と乾季があるため野菜の種類が豊富だ。またタイの農業の中心とも言える北部のチェンマイは土壌が肥沃で、かつ国境付近の山あいは冷涼な気候であるため、日本のような温帯の野菜も生産が可能だ。そのため、Talad Thaiに出回る野菜も多種多様であった。日本では冬が旬の白菜であったり、高冷地で栽培されることの多いキャベツなどの野菜も並べられていた。タイからは枝豆やアスパラガス、オクラなどが冷凍野菜として日本向けに輸出されている。チェンマイなどの北部の地域には日系企業が進出し、野菜を加工して日本に輸出している。またタイ企業がスイートコーンやベビーコーンを缶詰に加工して日本に輸出をしている。

 

冷涼な気候で育つキャベツや白菜も発見。ただ日本産より少し小ぶりだ。
冷涼な気候で育つキャベツや白菜も発見。ただ日本産より少し小ぶりだ。

輸入野菜を扱うエリアも視察したが、ほとんどが中国産だったというイメージだ。他国に比べて圧倒的に中国産野菜が多い理由として、ASEANの先行加盟国が中国とFTA枠組み協定に基づき、関税を撤廃していることが大い。そのほかに地理的な要因が挙げられる。中国の西南部に位置する雲南省で収穫された野菜は、メコン川上流の水運を使ってタイ北部の都市チェンライまで運ばれ、そこからトラックでバンコクまで運ばれるという流れだ。

Talad Thaiの担当者に「タイ国民は中国産農作物と国内産の農作物では、どちらが安心・安全なものと考えているのか。」という質問をしてみたところ、総じてタイの国内産農作物の方が信頼感は高いのではないかと話していた。

タイは生産・流通・販売のインフラがまだ十分に整備されていないことが安全性を下げてしまてはいるものの、2008年からタイ政府は国家食品委員会法を制定し、国を挙げて食品の安全性を国際水準まで押し上げる取り組みを行っている。そのイメージが浸透しているためか、タイ国民は自国産の食品の方が中国産のものよりも安全なものだと考えているのではないだろうか。

積み上げられた中国産のニンニクなど
積み上げられた中国産のニンニクなど

タイ国民の中でも高所得層割合が増加してきており、こうした食料安全に対する関心が高まってきている。タイ国内では確かに日本産食品に対する信頼度は非常に高いようだ。しかしながら、先の果物の輸入単価のように日本産食品は他国産食品より値段が何倍になってしまうこともしばしばだ。

そこで現在タイ国内で注目されているのが、国内で生産されるオーガニック食品だ。生産における安全意識が以前よりも高まってきたとは言うものの、まだまだ残留農薬に対する懸念が残っており、生野菜を安心して食すことがあまりできないのが現状だ。

タイのオーガニックブームについては、「【現地取材】タイ国内のオーガニックブーム」の記事にて紹介している。

<現地取材記事>
【現地取材】拡大するASEANの食肉マーケット カンボジア畜産現場レポート
【現地取材】タイ国内のオーガニックブーム

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