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10億ドル規模の食料廃棄市場には投資家が不足している

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Editors Note: This article was originally published on AgFunderNews, the online publication of AgFunder an investment platform for food and agriculture technology.


 

AgFunderReFEDの協力で、この記事では必ずしも関連があるとは言えないけれども、世界中の食料廃棄の削減に向けて取り組む技術をいくつか紹介したい。

ReFEDは食料廃棄量を減らすために30以上の企業、政府、非営利団体と共同投資している。2016年3月、アメリカ合衆国の食料廃棄を20%減らすためにロードマップを発表した。これは、食料廃棄物の解決策を模索する複数の投資グループによる初めての全米の分野や組織を超えてデータを活用した経済調査である。このレポートの著者は、ReFEDのディレクターかつMissionPoint Patnersというインパクト投資(経済的利益と社会貢献の両方を目指す)ファンドの社長であるSarah Vared氏、ReFEDのプログラムマネージャーであるNate Clark氏、AgFunderNewsの編集者であるLouisa Burwood-Taylor氏だ。

最近、食料廃棄物がその価値に値する注目を浴びている。過去1年間に、ほぼすべての主要なニュース刊行物は、すべての食料の約3分の1が社会で年間2000億ドル以上かけて処理されていることを強調した。企業、政府、イノベーターも同様に注意を払っている。

ReFEDによれば、食料廃棄物を20%削減するために、今後10年間に約180億ドルの投資が必要であり、このうち約8億ドルが民間のアーリーステージファンディングと成長株ファンディングの形で行われると予想している。

しかし、廃棄技術は、依然として多くの投資家によってニッチな市場とみなされている。オンライン投資プラットフォーム、AgFunderのAgtech投資レポートによると、2015年の20のユニークな”廃棄技術”スタートアップは9300万ドルしか調達できず、農業技術部門への投資総額の2%未満だった。AgFunderの”廃棄技術”の定義には、食品廃棄物から作られた製品、農業用廃水処理、農業または食料廃棄物低減技術からなる技術が含まれる。

2016年上半期に、AgFunderには2900万ドルが投資された。2016年の初めに資金調達を開始したスタートアップの2つの例は、Winnow SolutionsとSanergyで、それぞれ330万ドルと170万ドルを調達した。

“Winnow”は英国に本拠を置くスタートアップ企業で、レストランの客の食べ残しや厨房の生ゴミを測量するのに役立っていいる。”Sanergy”は、都市部のスラムから出たゴミを肥料や動物の飼料などの副産物に変えるケニアの事業だ。食料廃棄物の問題が世界中の注目を集めていることを考えると、なぜ未だに廃棄技術が成長中のAgtech投資のほんの一部しか占めていないのかはっきりしない。食料廃棄物に関する会議や競技会に出席するイノベーターの数が増えていることは、何かが欠けていることを示している。

一つは、この分野の多くの革新的技術にはインフラ要素があることだ。というのも、それらは、ゴミの収集や処理方法など既存のプロセスの変更、そしてゴミを加工するための巨大施設の建設が必要であるかもしれないからだ。これらは、限られた時間内で高いリターンを期待するベンチャーキャピタルではなく、企業等の信用力や担保に依存しない、プロジェクト・ファイナンスや無担保貸出に適している。

もう一つの答えは、廃棄技術の定義が狭すぎることだ。 定義は、主に、廃棄物処理に向けた解決策への投資は含むが、初期段階で廃棄を防ぐ技術を含んでいない。

この考えを調査するために、ReFEDは、この問題に取り組んでいる340以上の営利団体と非営利団体のイノベーターデータベースを参照した。ReFEDはこのデータを使って、食料廃棄物の革新における傾向や成長分野、ギャップを強調し、付随するグラフ情報でデータベースからのいくつかの洞察を強調する。

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このデータベースを分析すると、食品廃棄物への投資とイノベーションセクターは、以前に推定されたものよりもはるかに大きいことが分かる。AgFunderのリストで追跡中の組織を比較すると、完全に処分する必要を避け、食品を食料として保つために懸命に取り組む企業やイノベーターを含めることにまで廃棄技術の定義を広げるチャンスがあるのは明らかである。これらの企業は、「廃棄技術」という言葉に全く新しい意味を加える。

伝統的な廃棄物処理とサプライチェーンの効率性を超えて、ReFEDは革新にともなって12のカテゴリを追加した。これらのカテゴリのうちの4つは、貯蔵寿命を延長する製品、第2次オンラインマーケットプレイス、食用食品スクリーニングのアップサイクリング、および付加価値をつけたリサイクルなどの追加の革新と投資を受けて特に発展している。

貯蔵寿命延長技術

腐敗しやすい食品の貯蔵寿命を延ばすなど、食品の腐敗を防ぐための食品製造者、流通業者、および消費者のための革新のことである。 Apeel Sciences社の「Edipeel」は、農業者の収穫後の問題を解決する。酸化および水分の損失を減らすために農産物の表面層を作り、平均貯蔵寿命を2〜5倍に延長するのだ。

タンパク質の多い新鮮な魚や肉といった食品を扱う卸業者は、冷蔵輸送容器内で、酸素レベルを積極的に減らしたり、温度を維持したりするために、燃料電池と内蔵センサーを組み合わせたBluWrapを利用することができる。この技術は、新鮮な魚や肉の貯蔵寿命を最大40日間延長することが分かっている。

消費財市場には、果物を成熟させる働きのある炭化水素エチレンが発生するのを防ぎ、取り除く製品が多くある。たとえば、Bluappleは家庭用冷蔵庫に保管できる小型の道具で、エチレンを吸収して果物を新鮮なまま貯蔵し、消費期限を伸ばす。

他にもコンテナに残された食品を減らすための包装の調整や家庭での堆肥化をより魅力的にする技術など、捨てる食品の量を減らす方策がある。これらはまた新たな革新と投資のチャンスにもなるだろう。

二次オンラインマーケットプレイス

次は、余剰食料の二次的市場を創造している明るいビジネスを紹介する。 ReFEDのロードマップのレポートによると、主に外見の欠陥のために、毎年1,000万トンの農産物が売りに出されない。この完璧に食べられる食べ物を救済し、農家の収入をもっと増やすために、CerplusSouper SecondsFull Harvestなどの企業は、この超過分を食品事業に売るオンライン市場を作った。若干異なるアプローチをして、Imperfect ProduceHungry Harvestは、余剰品や外見に問題があった農産物と消費者を直接結び付け、玄関に直送する「コミュニティ支援農業」ビジネスモデルを利用している。

食品廃棄物の別の主な発生源は、年間約7百万トンと推定されるレストランだ。 そこでGebniFood for AllToo Good To Goのようなリアルタイムのアプリケーションは、飲食店が売却またはゴミ箱に入れなければならない剰余金の値引きや取引をユーザに通知することで、買い手と売り手の双方にウィンーウィンの関係をもたらしている。

人々のための食品を回収するのか、はたまた土壌やエネルギーのために食品を回収するのかという様に、食品回収の効率性を高めるために分析を活用するソリューションは、独創性と資本を必要とするもう一つの分野なのだ。

食料の切れ端のアップサイクリングと付加価値リサイクル

最後に、食品「廃棄物」と考えられるものを付加価値のある製品に変えるさまざまな方法を使用している起業家がいる。70〜80%回収した果物や野菜からジュースを作るMisfit Juiceryと、健康的なタンパク質ベースの食事を作るために余剰産物と「賞賛されていない」魚を利用するSecondsFirstという2つの企業がある。

また、異なる製造プロセスにて廃棄されたもののまだ食べられる副生成物を取ったり、まったく新しい食品を作ったりする起業家もいる。 CoffeeFlourは、コーヒー豆を収穫した後、未使用のコーヒーチェリーを残し、栄養価の高い小麦粉に変換する会社だ。食品廃棄物が最終的にゴミ箱に運ばれても、イノベーターたちは植物肥料(Re-Nuble)から生分解性プラスチック(Full Cycle Bioplastics)までの新製品に加工するソリューションを開発している。

ReFEDの研究は、農業を逸脱する付加価値をつけられた製品を通じて、ほとんど開拓されていない堆肥市場を広げるためのチャンスがあることを明らかにしてきた。というのも、廃棄物リサイクルの取り組みが増加するにつれて、より多くの供給が可能になると予想されるためである。

イノベーションは、国内および世界の食品廃棄物削減目標を達成するための重要な指針とみなされ、投資家と起業家コミュニティはそれに応えつつある。インパクト投資のカンファレンスであるSOCAPでは、9月に少なくとも3つの異なる廃棄物に焦点を当てたセッションが開催された。農業技術の最も古いカンファレンスであるAg Innovation Showcaseも廃棄技術にスポットライトを当て、また、OpenIDEOのFood Waste Challenge(2016年6月から10月に開催)は、450以上の提案で幕を下ろした。これは、国際社会がそのチャレンジに向かってステップアップし始めたというもう一つの兆候だ。

AgFunderとReFEDは、廃棄物をまったく発生させないことを意味する「廃棄技術」の世界に移行するように、この成長が続くことを楽しみにしている。

 

Link:https://agfundernews.com/billion-dollar-food-waste-market-investors-missing.html

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