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風評被害の払拭へ。タイで福島県産のモモ20トンを販売開始

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この夏、福島県からタイへの果物輸出が大幅に拡大する。食品の輸出入を手掛ける株式会社アライドコーポレーションは、7月上旬から首都バンコク市内のスーパーやデパートにて福島県産モモの販売を開始する。先月には福島県の堀内知事がバンコクを訪問し、百貨店関係者などと会談を行い、福島県の特産品のPRを行った。日本食ブームのバンコクで認知度を広げ、原発事故による風評被害払拭を目指す。

特筆すべき点は、20トンというその輸出量だ。昨年のタイへの福島県産モモの輸出量は1.3トンで、今年は昨年の約15倍にもなる。国内全体で見ても昨年の輸出量は約5.3トンで、今回の輸出量がいかに多いかがわかる。

そして現地での販売価格も、従来の日本産モモよりも大幅に安い1玉100~200バーツ(約300〜600円)を予定しているという。こうしたリーズナブルな価格を実現できた背景には、輸送方法が関係している。

日本からタイへのモモの輸送には、低コストの船ではなく航空機を利用するのが一般的だ。その主な理由として、鮮度保持に問題が生じることが挙げられる。しかし今回の福島県産モモの輸出には、船便を利用する。なぜ船便を利用することが可能になったのだろうか。

今回、こうした鮮度の問題については、「CAコンテナ」を活用する事で対応する。CAコンテナとは、温度管理と同時に酸素と二酸化炭素の濃度を調整することで、青果物の貯蔵期間を延長することができるコンテナだ。フルコンテナの場合であれば、輸送コストは空輸の約10分の1にまで抑えることが可能とのことだ。

福島県産のモモの国内シェアは約22%で、山梨県に次いで第2位。日本ナシも第4位、リンゴは第5位と、果物の生産に強みを持つ。しかし福島第一原発事故による風評被害は、事故発生から5年経った今も拭えることができていないのが現状だ。福島県産のモモの販売価格は山梨県産に比べて25%も安く、事故以前の価格には戻っていない。

一方で、タイで増加している富裕層には日本産の高品質で安全な果物が人気を博している。タイの高級百貨店の青果物コーナーには日本産の果物が並び、高価格にも関わらず手に取る人は多い。バンコクで積極的に福島県産モモのPRを行い、そして低コスト販売を実現することで、従来よりも幅広い顧客層にアプローチができる。日本産農作物輸出の新たなスタイルで、福島県は風評被害払拭への活路を見出す。

福島県産のモモは7月から9月上旬に、タイの高級スーパーであるセントラルワールド、サイアムパラゴン、フジスーパー等で販売される。時期に応じて6種類のモモを楽しむことができるとのことだ。

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