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エチオピア食糧危機を免れるか −成長を支える2つの機関−

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発展するエチオピアの農業

エチオピアは度重なる食糧危機に見舞われてきた。中でも1983-5年の飢餓では実に100万人もの人が亡くなった。そして1985年の飢餓から30年経とうとしている今、エチオピアはエルニーニョによる干ばつに見舞われており、新たな食糧危機に直面している。

しかし状況は1985年とは違う。この30年でエチオピアは農業を基盤に、世界でも最も早い経済成長(2014年時 9.9%)を見せる国の一つにまで成長した。世界銀行によると、2014年において、エチオピアの農業はGDPの半分弱、輸出の84%、雇用の80%を占める規模にまで成長した。

何がエチオピアの農業をここまで成長させたのだろう?一つ目に、政府が農業に大量の予算を割いてきたことが挙げられる。2015年には予算の17%もが農業に用いられた。二つ目に、エチオピアの農業が抱えていた諸問題を解決するために、多くの機関が創設されたことが挙げられる。結果、収穫量は増加し、この10年の農業セクターの成長は平均7%を記録した。本記事では、エチオピア農業の成長を牽引した二つの機関、ATAとECXの働きに迫る。

① Agriculture Transformation Agency (ATA)

エチオピアの農業の発展の鍵は、農業が抱える問題の解決を専門とした機関を創設したことにある。中でもAgriculture Transnfomation Agency (ATA)が果たした役割は大きい。

J.P. Morganでキャリアを始め、Bill and Melinda Gates Foundation でも農業開発グループのシニア・ディレクターを務めたATAのCEO、カリド・ボンバ(Khalid Bomba)は「我々は農業におけるボトルネックを見つけ、それを取り除くことを目的とした問題解決機関だ」と語る。

2011年の設立以来、ATAは農業のボトルネックを取り除くため様々な活動をしてきた。中でも、全国の土壌をマッピングしデジタル化したことと、農家のための無料ホットラインを設立したことは特筆すべきである。

Ethiopian Soil Information System (EthioSIS)

EthioSISと呼ばれる土壌のマッピングスキームはATAが最も大きな成功を収めたプロジェクトだ。2012年に始まったEthioSISは、衛生情報と土壌のサンプリングを行うことによって全国の土壌図をつくった。これにより、EthioSISは各地域において、どの肥料が適しているか把握することに成功し、農家に使用する肥料のアドバイスができるようになった。

農家はEthioSISに自分の農地の土壌のサンプルを提出さえすれば、EthioSISの職員がどの肥料を使うべきかアドバイスをしてくれる。EthioSISが開始する以前は、農家はどういった土壌で働いていようと2つのブランドの肥料のうちいずれかを用いていた。しかし今では、農家はEthioSISに相談すれば、EthioSIS職員が12種類の肥料の中から最適なモノを教えてくれる。

EthioSISのおかげで農家は自分の農地に適した肥料を使うことができるようになり、生産は増加した。現在、EthioSISをモデルにガーナ、ナイジェリア、タンザニアでも同じようなプロジェクトが開始されている。

農家無料ホットライン

ATAは携帯の普及も上手く活用している。農家のための無料ホットラインがその一つである。2014年に開始したこのサービスでは、農家はATAの農業専門家グループに農業に関する様々な質問をすることができる。ATAの農業専門家グループは土壌の整備、収穫、肥料等についての質問に対応することができるだけではなく、作物、地理、人口分布のデータを用いて、干ばつ、害虫、病気の情報も提供する。また、オモロ語、アムハラ語、ティムリーニャ語での対応が可能である。

ホットラインは、9400万というアフリカ第二の人口を誇るエチオピアの全ての農家が農業についての正しい情報にアクセスすることができるようにすることを目的としているが、依然として難しい状況であることは間違いない。エチオピアでの携帯の普及率が21%にとどまっていることがその最大の要因であると考えられる。しかし開始から1年で既に730万本の電話を受けたことから、今後のさらなる普及が予想できる。

② エチオピア商品取引所(ECX)

ATAの他にも農業の抱える問題を解決に貢献している機関がある。エチオピア商品取引所(ECX)である。ECXは価格のボラティリティーを防ぎ、安全な運搬とスムーズな支払いを保証することによって、生産者と購入者の取引を活発化させている。

「生産を増やすだけではいけない。生産したモノを市場を通して、効率よく分配する方法が必要である。さもないと、ある地域では余剰があるのに、ある地域では不足がある状態から脱することができない。」とECXのCEO、イレイニ・ガブリ・マディン(Eleni Gabre-Madhin)は語る。

このように、過去20年でエチオピアの農業は大きく発展してきた。だからこそ、現在エルニーニョの影響で起きている干ばつにどこまで対応できるのか期待せずにはいられない。

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参考:

http://allafrica.com/stories/201512281544.html

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