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ジンバブエ:干ばつに見舞われ災害事態宣言

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災害事態宣言

本メディアで以前、エルニーニョのためアフリカ南部が干ばつに見舞われていて、1400万人もの人が飢餓に直面しているとお伝えした(アフリカ南部にも追い打ちをかけるエルニーニョ現象)。

そのような中、ジンバブエのムガベ大統領が干ばつに見舞われている農村地域が災害事態にあると宣言した。ジンバブエは現在、干ばつのせいで人口の実に26%にあたる244万人が食糧援助を必要としている状況である。ムガベ大統領は災害事態宣言を発することにより国際援助機関からの援助を集める狙いだ。

今年の干ばつは、ジンバブエにおいてこの25年で最も大きいものとなる。カスクウェレ公共事業大臣(Saviour Kaskuwere)によると、今年は通常の四分の三の雨量しか観測されていないとのことだ。そして干ばつの影響は農業以外にも深刻な影響を与えている。

その一つが電力供給だ。雨が足りずダムの水位が低下していることから、電力供給が不足している。ジンバブエ最大の水力発電所、カリバ水力発電所は電力供給を62%カットしたとのことである。

ジンバブエの食糧危機は自然災害?

かつては Breadbasket of Africa (アフリカの穀倉地帯)と呼ばれ、アフリカ大陸随一の食糧輸出国だったジンバブエが食糧危機に陥った原因は何にあるのだろう。無論、エルニーニョという自然現象がジンバブエの食糧危機を誘発したことに疑いの余地はない。しかし、ムガベの政策がジンバブエに食糧危機をもたらしてしまったという見方もできる。中でも2000年の土地改革はジンバブエの農業に甚大な被害を与えた。

2000年以前のジンバブエでは、白人が地主として働き、黒人が労働者として働く大規模農園が多数存在し、効率的な集約農業が行われていた。しかし2000年に状況は一変した。ムガベが白人の地主から強引に農地を奪い国有化にした後、黒人にその農地を分配する土地改革を実行したのである。

結果は悲惨なものだった。まず土地の分配方法に問題があった。農地は農業の知識を持っている人にではなく与党 ZANU-PF の支持者に与えられた。結果、黒人でも与党の支持者ではない人は農地を貰えず、黒人と白人の両方で失業者が多数出現した。また農地を貰った人は与党を支持していたというだけで、農業の知識を持っていなかったため農業を始めても生産は低かった。さらに、大規模農園が没収されたため農家は小規模農家へと転じてしまい、規模の経済を失った農家の生産は落ち込んだ。

無論エルニーニョがジンバブエの食糧危機を誘発したことに疑いの余地は無いが、今回の食糧危機が完璧な”自然災害”であったかどうかには疑問が残るところであろう。

関連記事:アフリカ南部にも追い打ちをかけるエルニーニョ現象

参照:

http://www.reuters.com/article/us-africa-drought-zimbabwe-idUSKCN0VE0HA

http://allafrica.com/stories/201602060004.html

http://www.economist.com/node/1201137

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