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イスラエルの農業テクノロジー企業Phytech、シリーズAを獲得

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データに基づいた分析で、収穫量の最大化を目指して生産者を支援

イスラエルの農業テクノロジー企業であるPhytech社は、シリーズAによる資金調達の契約を締結したと発表した。これにより、同社はグローバルマーケットにおけるシェア拡大にまた一歩近づいた。交渉を主導したのは、現在のパートナーで機関投資家であるSyngenta Ventures社と、欧州三井物産株式会社である。Syngenta Ventures社はベンチャーキャピタルであり、世界最大級の農業関連企業に名を連ねたPhytech社に出資している。

1998年の創業当初、Phytech社は当時の同業他社と同じような手法を取っていた。つまり、モニタリングに基づいた作物のデータを生産者へ提供し、資金調達をIPO(新規株式公開)で行うというものだ。ところがSarig Duek氏が同社を買収した2011年に転機は訪れる。この買収により投資家の協力が得られたため、同氏が独立して業務を行うことが可能となり、データの解析と顧客へのデータ提供方法に関する新たなアプローチが実現したのだ。

2012年~2014年の2度にわたる交渉の過程で、Phytech社は300万ドルのシードファンドを調達することに成功し、これにより同社は急成長を遂げ新規市場へ参入することが可能となった。同社は今回の交渉で得た金額を公表してはいないが、シードファンドの交渉時に得た合計金額以上であることを認めている。

Phytech社の製品は、「意思決定支援ツール」と定義することができ、このツールにより、給水量や給水時期といった水の管理を最適化することができる。一方、アプリケーションでは、機器を介して作物のストレスレベルをチェックする。機器に搭載されたセンサーを作物に取り付けることにより、作物の必要とする水分量を生産者へ知らせ、収穫量を最大化する。衛星画像、気象データ、土壌水分量、作物、そして作物の環境要因といったデータを集約することで、基礎的なインターネット・オブ・プラント(インターネットによる作物監視・管理システム)を構築する。

すべてのデータはクラウドへ転送されて集計および分析が行われ、収穫量を最大化するための実践的な警告や推奨事項が発信される。さらにこれは節水にもつながるため、大幅なコスト削減につながる可能性がある。

同社のビジネスモデルはデータ購読サービスを基本としており、生産者は季節ごとに、作物に応じたデータの購読料金を支払う。サービスのフルパッケージには、作物に取り付けるセンサーから分析用クラウドシステムまでのすべてが含まれている。

Phytech社は、アーモンド、コーヒー、アボカド、コットンなど、高値をつける高価値な作物の生産者と取引を行っている。イスラエル本国では、すでに市場の大部分が同社によって占められているが、オーストラリア、カリフォルニア、ブラジルといった世界中多くの地域で、同社の革新的な分析アプローチによる事業展開が期待されている。

同社はこれまで、農業製品の開発を積極的に行うシンジェンタのような多国籍大企業との戦略的パートナーシップを何度も築いてきた。先日中国の化学メーカー、中国化工集団(ChemChina)に買収されたシンジェンタはスイスを拠点とするバイオテクノロジー企業であり、殺虫剤から、強く耐性のある作物に成長する遺伝子組み換え種子まで、様々な製品を取り扱っている。(参考:ChemChina(中国化工集団)がシンジェンタを買収

 

競合企業と対等に渡り合う

Geektimeによると、Duek氏は次のように述べている。「当社は、作物の状態のみならず天候や土壌などの要素が収穫量に与える影響などの全体像を解析プラットフォームを通じて生産者へ示すことができる。この点において当社は、農業テクノロジー分野における他企業とは一線を画している」。さらに同氏は、「当社は、人工衛星のみに頼る他の企業を凌ぐ存在である」とも述べている。

同業他社としては、CartaSense社、Ranch Systems社、Avid Wireless社などがあげられる。これらの企業も給排水に関する提案や機能の制御を行っているが、Phytech社では独自のデータ分析手法および通信が容易なデータの伝送手法を提供しており、これが同社をトップに押し上げているようだ。

 

将来の展望

作物に最適な給排水を行うため、生産者の意思決定プロセスを支援するPhytech社のソリューションは、同時に同社が新規分野への参入を目論む画期的な学習機器を生み出した。

「土壌監視や施肥の必要性に関する新規開発中のソリューションを、当社はすでに数多く所有している。」とDuek氏はGeektimeに述べている。

同氏は、今回調達した資金は市場開拓のような初期段階に対してではなく、市場における同社のシェア拡大を実現する手段として、パートナーとの協力体制のもと利用する計画であることも付け加えている。また同社は今後も研究開発を継続し、害虫その他の要因が作物のストレスレベルにいかに影響するかなどの研究を行う予定としている。

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参考:http://www.geektime.com/2015/12/29/israeli-agriculture-technology-phytech-harvests-their-series-a/

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