ガーナ:農機シェアリングエコノミーのスタートアップTroTro Tractorが5万ドルの資金調達へ
農家と農機作業代行オペレーターを繋ぐマッチングサービス
ガーナのAgTechスタートアップであるTroTro Tractor社が、ガーナにおける石油・ガス開発のリーディングカンパニーであるKOSMOS Energy社より5万ドルの資金調達を行った。また、それに伴いMeltwater Entrepreneurial School of Technology (MEST)社からのスタートアップ支援を受ける権利を獲得した。
TroTro Tractor社は、GPS技術を用いたオンラインプラットフォームを提供する。具体的には、農家と近隣の農機作業代行オペレーターをオンライン上でマッチングさせ、作業スケジュールの調整サービスや、プリペイドの代行料金支払サービスを提供する。
TroTroTractor社の公式HPによると、この取り組みはガーナにおける三つの課題を解決するという。三つの課題とは、一つ目に、大半の農家はトラクター作業を行う必要がある時に、農機作業代行オペレーターに容易にアクセスできない状態であること。二つ目に、農機作業代行オペレーターは、顧客農家とのアクセスが容易ではないこと。三つ目に、トラクターの所有者は、トラクターを監視することができないことである。
この取り組みは、トラクターを用いた農家のための「Uber」であると評される。固定回線ブロードバンドの契約率が世界で最も低いアフリカにおいて、携帯電話の普及が急速に広まっている「モバイル革命」とも関連性が高く、特にモバイル送金技術の急速な普及がこのイノベーションを後押ししているといえるだろう。
他国の農機シェアリングエコノミーの動き
農業機械を用いたシェアリングエコノミーでは、アメリカのMachineryLink社(カンザスシティ)が運営する「MachineryLink Sharing」が有名である。これは、地域による作業時期のズレをに着目した農業機械のCtoCオンライン貸し借りプラットフォームであり、オプション料金を支払えば農業機械だけでなく農機オペレーターを借りることも出来るという。
農機シェアリングエコノミーの課題と活路
農機シェアリングエコノミーには、現時点では課題も多い。かつて弊社も、カンボジアを拠点に農業機械を用いた収穫代行ビジネスを手掛けていた。その現場を知る弊社代表の齋藤祐介によれば、大きく三つの課題があるという。
一つ目は、農作物に関わるビジネスであるため、天候や自然災害によって収益が安定しないこと。二つ目に、そもそもネット上のマッチングが本当に必要な状況かということ。つまり農村に一つ農業機械があれば、村の中で貸し借りや代行を行うことが効率の良い解決策になる可能性も否めず、わざわざオンライン上でマッチングを行う必要性は低くなるということである。三つ目に、遠方で強いニーズがあっても特に途上国では交通インフラが整っていないため、農業機械の搬送にも大きなコストがかかることである。
それでは、この課題を乗り越える活路はどこにあるのか。
考えられる活路の一つとして、サービスを展開する最初の段階で大量の農家とオペレーターをサービスのユーザーにできるかどうかという点が挙げられる。特に、ITリテラシーが低い発展途上国でITリテラシーを必要とするサービスを浸透させるのは至難の技であるといえる。この点において、TroTro Tractor社は、大手企業と提携することで活路を見いだせる可能性はある。ここがクリアできれば、規模の経済が働き、先程の三つの課題を解決できる可能性が出てくるだろう。
いずれにせよ、このような農機シェアリングエコノミーの取り組みは、地域内に留まりがちであった農業機械と農機オペレーターの遊休資産情報を、インターネットによって今までアクセスが容易でなかった地域の外に繋げていく試みであり、うまく利用すれば農家にとっては生産資材コスト低減にも繋がる仕組みとなる。今後の各国の動きに注目したい。
参考:
http://disrupt-africa.com/2016/10/ghanas-trotro-tractor-raises-50k-from-kosmos-energy/
http://techcabal.com/2016/10/12/kosmos-energy-invests-in-trotro-tractor-and-ghalani/