ガンビア、米の輸入規制を見送り
Vision 2016
日本人よりコメを消費する国民は世界に意外と数多く存在する。その中の一つが人口わずか130万人、アフリカ大陸で最も小さい国、ガンビアである。日本の年間一人あたりのコメの消費量が66.7kg(平成15年)である一方、ガンビアの年間一人あたりのコメの消費量は107kgにものぼる。
しかし、ガンビアではコメの自給率がわずか20%にしか満たない。そのうえ、自国のコメ不足を解消するため、GDPの5.5%にあたる、およそ5000万ドル(2014年)を毎年コメの輸入に使っている。この実情を問題視したジャメ大統領は2013年3月に、2016年までの2年間でコメの自給率を100%まで増加させると同時に、2016年よりコメの輸入禁止へ踏み出すという野心的な計画「Vision 2016 」を打ち出した。
実現可能性に疑問の声
しかし、計画発表当初から、コメの生産を500%増加させるというこの野心的な計画に懐疑的な眼を向けるものも少なくはなかった。そもそも、ジャメ大統領がコメの生産向上に取り組むことは初めてのことではない。1994年に就任して以来ジャメ大統領はコメの生産向上を幾度も目標として掲げてきたが、成功したことは一度もない。原因としてガンビアには未だに灌漑施設が整っておらず、ほとんどの農家が天水農業を行っていることがあげられる。また、農業人口が多い一方(労働人口の75%)、30歳以下の若者の農業従事率が20%にしか満たないことや、コメが商品作物としてではなく、家で消費するための自給用作物として扱われていることもコメの生産量の低さの一因である。
実現の難しさから発表当初から批判が多かった「Vision 2016」であったが、ジャメ大統領の前向きな姿勢に賞賛の声もあがったことも事実である。国際連合食糧農業機関(FAO)は2014年11月ガンビアがミレニアム開発目標1である「極度の貧困と飢餓の撲滅」へ大きく前進していると賞賛の声をあげた。
残念な結果
このように、注目を浴びていたが、11月19日に、ガンビア政府はコメの輸入禁止を2016年の9月まで先送りすることを発表した。つまり、ガンビアはコメの自給率改善に失敗したのである。USDAの予想によると、2015年10月から2016年9月の間のガンビアのコメの需要は18万5千トンとなる中、コメの生産量は3万5千トンにとどまる見込である。その一方、来年も、およそ15万5千トン分ものコメを輸入する必要があると予想される。当初から実現可能性に懐疑的な意見が多かった「Vision 2016」であったが、期待の声もあがっていただけに、今回の発表は非常に残念な結果となった。
参考:
http://www.oryza.com/24302/gambia-defers-plans-ban-rice-imports-september-2016