バイエルがモンサントを6.8兆円で買収:農薬・種子業界再編を時系列で見る
ドイツの農薬大手のバイエルは、今月14日、アメリカの種子業界大手のモンサントを買収することで合意したと発表した。買収の規模は全体で660億ドル(約6.8兆円)にのぼる。
今年の5月から始まったこの交渉が幕を下ろした。当初バイエル側はモンサントの1株当たり122ドルを提示していたが、モンサント側はこれを拒否した。ブルームバーグによれば、バイエルは7月に125ドルに引き上げた買収額を提示したようだ。モンサントは拒否したもののバイエルにデューデリジェンス(資産査定)を認め、バイエルが先週127.5ドルを提案。最終的に128ドルでの決着がついたとのことだ。
昨年から続く農薬・種子業界のM&Aによって、この1年間で業界の大手プレイヤーは6社から4社になった。同業界にはもともと「ビッグ6」と呼ばれる6社(ダウ・ケミカル、デュポン、モンサント、シンジェンタ、バイエル、BASF)の寡占状態が続いていた。しかし近年は穀物価格の下落などの影響により、これら企業の収益は低調だった。そのためM&Aによる競争力強化の動きが昨年から始まった。
昨年12月にはアメリカの化学大手2社のダウ・ケミカルとデュポンが経営統合を果たし、農業関連の新会社を設立すると発表した。業界再編はこれを皮切りにスタート。今年の2月には、中国の化学メーカーである中国化工集団がシンジェンタを約5兆円で買収。中国で史上最大の買収とのことで話題となった。今回のバイエルによる買収はこの買収額を大きく上回ることになる。
遺伝子組み換え種子に強みを持つモンサントは昨年5月より、シンジェンタの買収を提示していたものの、中国メーカーに敗れる形となった。そこに農薬に強みを持つバイエルが白羽の矢を立て、交渉を開始。4ヶ月間続いた交渉を終え、農業関連ビジネスの巨人が誕生した。
買収は2017年末に完了の予定とされている。しかし買収には世界30地域で買収承認申請が必要で、これは大きなハードルであるとの見方がある。買収が破断になった場合、バイエルはモンサントに20億ドルの違約金を支払うことになっている。
農薬・種子業界のM&Aを時系列で確認
・デュポンとダウが合併:農薬業界に新会社がもたらす変化とは(2016年1月7日配信)
昨年12月、化学メーカーで世界シェア第2位のダウ・ケミカルと第8位のデュポンが合併したのが業界再編のスタートだった。新会社「ダウ・デュポン」の時価総額は130億ドルにのぼりました。また両社は農業系の新会社を設立するとのことで、今後影響力を増していきそうなプレーヤーになりそうだ。
・【動向まとめ】大手農薬メーカー・シンジェンタの買収騒動(2016年1月26日配信)
・ChemChina(中国化工集団)がシンジェンタを買収(2016年2月6日配信)
・シンジェンタ買収 中国におけるGMOへの影響(2016年2月11日配信)
今年の2月には中国化工集団がシンジェンタを5兆円規模で買収。実は、ダウ・ケミカルとデュポンが合併をする以前からモンサントはシンジェンタの買収を模索していた。
・バイエルのモンサント買収:農薬業界の今後に迫る(2016年5月20日配信)
・モンサントの買収:バイエルが候補先に挙げられた理由とは(2016年7月26日配信)
今年5月に入り、バイエルがモンサント買収の交渉を開始したとの報道があった。その後ドイツ化学大手のBASFもモンサント買収を模索し始めた。4ヶ月の交渉の末、バイエルがモンサント買収にこぎつけたようだ。