デュポンとダウが合併:農薬業界に新会社がもたらす変化とは
2015年12月11日、アメリカ化学製品メーカー大手のダウ・ケミカルとデュポンが経営統合を発表し、大きな話題となった。ダウ・ケミカルの売上は化学製品部門で2015年現在世界第2位、デュポンは第8位であった(参考に、日本の化学製品最大手・三菱ケミカルホールディングスは世界第11位)。新会社「ダウ・デュポン」の売上高は2014年の総売上を合算すると929億ドルで、世界ダントツ最大手のドイツのBASFを抜くメガ化学メーカーが誕生したのだ。
新会社は農業関連部門会社、素材部門会社、特殊製品会社の3つの部門にビジネスを分割すると発表した。農業関連部門でのダウ・ケミカルとデュポン両社の2014年売上の合計は約190億ドルだという。ダウ・ケミカルの強みはその規模にあり、一方でデュポンは以前に石油会社を分離するなど、低付加価値の汎用品から高付加価値商品中心のビジネスへと転換を図ってきた。農業関連部門では主に農薬や遺伝子組み換え種子を生産する。
デュポンCEO・Edward D. Breen氏は、「両社にとって資本をより効果的に配分することができ、より生産性の高いパワフルなイノベーションを起こし、付加価値の高い商品を世界中に提供できる。」と話している。Breen氏は今後農業関連部門会社を率いる予定だ。
この業界では、中国国営の化学製品メーカーChemChina(中国化工集団)がスイスのシンジェンタとのM&Aの噂もあるという。シンジェンタは農薬業界で世界最大手、種苗業界では世界第3位という世界的なアグリビジネスを展開している。ダウ・ケミカルとデュポンの統合は農薬・種子業界に変革をもたらし、業界内でのM&Aに拍車をかける可能性がある。ChemChinaは近年シンジェンタ以外にも、モンサント(米)との合併に関する議論があったという。モンサントもシンジェンタ同様にアグリビジネスを展開し、遺伝子組み換え作物の種子開発に強みを持っている。アグリビジネスに関してはアメリカ首位だ。
しかしダウ・ケミカルとデュポンの今回の経営統合は、農業業界の構図を大きく変換させることになりそうだ。農薬・種子市場は「ビッグ6」と呼ばれる大手の寡占状態が15年ほど続いてきた。ビッグ6とは、モンサント、デュポン、シンジェンタ、ダウ・ケミカル、バイエル(独)、BASFを指す。ダウ・デュポンの時価総額は130億ドルになるとみられ、完全に農業・化学の業界を再編させる大きな要素となるのだ。2016年は農薬・種子市場におけるM&Aの動きに注目したい。