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ASEAN諸国でIoTを用いた スマートファーミングへの動き

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マレーシアが先導するIoT技術を用いた農業の改善

マレーシアはIoT(モノのインターネット: コンピュータ等の通信機器だけでなく、世の中の様々な物体に通信機能を持たせることで、自動認識や自動制御などを行うこと)技術をどのようにアセアン地域の農業に活用するかについての研究を、官民連携を原動力として進めている。

Frost & Sullivian Asia Pacific社のICT(情報通信技術)部門のインダストリーマネージャ、シリーネ チャン氏は、「マレーシアはアセアン地域の農業におけるIoT活用の先陣を切っています」と述べている。

チャン氏によると、様々な利害関係者が手を取り合って試験的なプロジェクトを進めており、民間企業や政府機関と緊密に連携した研究機関によって、製品やサービスをマレーシアの国内外に届けるための研究開発が進められている。

またマレーシアには、多種多様なサービスプロバイダーが提供するインターネットにいつでもどこでもアクセスできるという、“高度に発展した“ 情報通信技術のインフラという強みもあるとチャン氏は言う。

さらに、消費者・企業・そして産業部門のいずれにおいても、オンライン通信機器が広く利用されてもいる。

マレーシア電子システム研究所(MIMOS)は農業の発展に寄与するいくつかの解決策を創生してきた。例えば、Mi-MSCAN TpHと呼ばれる環境データを収集するためのセンサーの開発だ。

MIMOSはまた、IoTの活用を含む農業の枠組みを開発した。それにより、農業生産者、仲買人、販売企業を一同に統一システムの元に繋げることが可能だ。その枠組みには、いくつもの技術が用いられている。微小電気機械システム(MEMS)によるワイヤレスセンサーネットワーク技術により、環境データを収集する。また、クラウドソフトウェア技術により、起こりうる脅威を自動的に観測し和らげる。これらの技術により、サプライチェーン管理への解決策及びオンライン市場のプラットフォームを提供することが可能となる。

チャン氏は、農業領域におけるIoT技術の効果的な活用は、「このマレーシアにおいて非常に確立され成熟した産業領域が、バリューチェーンを強化しさらなる価値を生み出す助けになるでしょう」と述べた。

フィリピンもまたリモートセンシング技術の国内の稲作支援への活用を始めている。衛星画像と地上データ処理により、農作のコンディションに関する情報を生成することが出来るのだ。

「リモートセンシング技術により、一部の作物に異常が起きていることを、他の大部分に影響を及ぼす前に発見することが可能かもしれない」と、フィリピン科学技術省(DOST)の被害軽減のためのリスク評価プロジェクト(Dream)のプログラムリーダー、エンリコ パリンギット氏は提言する。

「エルニーニョ現象は、リモートセンシング技術により観測されたのです」とパリンギット氏は言う。

DOSTのDreamプログラムではリモートでのデータ伝送を可能にするため、2016年以降2つのマイクロ衛星の打ち上げを予定している。日々の配信データは、サンバレス州スービックにある、フィリピン地球データ資源及び観測センター(Pedro)と呼ばれる地上の受信局に送られる予定だ。

このプログラムは現時点では2年間継続し、作物や気象の専門家に特定地域の農作状況の情報を提供する予定だ。

またそれに加えて特別なデータを受信・配信し、政府官僚に対して、害虫の発生や年間のコメの収穫量等の関心分野における知的な意思決定のツールを提供し、それにより生産不足を防ぐことも可能だろう。

「想像してみて下さい。我々は今や、コメの生産量が十分かどうかを、必要量と年間の収穫高を比較して決定することが出来るのです」とパリンギット氏は言う。

「これにより、我々は今では本当にコメを輸入する必要があるのかどうかを決定するに当たって、経験的根拠を持つことが出来るので、国内の生産者が利益を最適化するための本当の手助けが可能になるのです。」

一方で、タイ国立電子コンピュータ技術センター(NECTEC)は、4つの主要作物(コメ、キャッサバ、ゴム、サトウキビ)を焦点にしたスマート農場設立のためにITと電子技術の応用を行っている。その目標は、生産性及び農作物の品質を向上し、タイ農村地域の農業従事者の生活の質を改善することだ。

また、アジア工科大学院(AIT)は “生きる研究所”というコンセプトをタイで実現し、ワイヤレスセンサーネットワーク(WSNs)とIoT技術の将来性を示すための研究活動を行っている。この研究活動の目標の一つが“スマート動物農場”であり、それは家禽および魚の飼育環境を監視・コントロールし、生産性を向上させるというものである。また、“スマート農業”も目標の一つであり、それは作物の収穫量増加の手助けとなる様にIoTを農作環境の監視・コントロールに利用するというものだ。

Frost & Sullivian社のチャン氏はこう付け加える。「IoTセンサーを活用する目的は、特にタイの農作物の輸出において競争力を生み出すこと。そのために、輸出業者に対して、農作物がどこで育ったのか、その詳しい品種や鮮度、また農作物の出自や起源を辿るために重要となるその他の情報の透明性を上げることです。」

「それはRFIDタグ、バーコード、そしてその他のセンサー技術を展開し、作物の生産地及びそれらの作物への需要がある届け先を明らかにすることにより、成し遂げられました。」

しかしながら、チャン氏はこうも言及した。「IoTの技術のアセアン地域の農業への応用がコストの面で見合うかどうかは難しい問題です。なぜならば、この地域の労働力は比較的安価だからです。農業におけるIoTの利用には、政府の補助が得られるかどうかや、利用に応じた課金モデルなど、いくつもの実現条件が必要になるでしょう。」

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参考:http://www.computerweekly.com/news/4500269831/Asean-countries-consider-IoT-for-smart-farming

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