農業は次なる成長産業となるためのイノベーションを生み出せるか？
以前の記事（アメリカ農業不振にもかかわらず、AgTechへの2015年の投資額は2倍に）でもお伝えしたように、2015年、世界では農業テクノロジー（AgTech）の革新が象徴される年であった。
ご存知の方も多いかとは思うが、世界の人口は2050年までに100億人に迫る見通しで、その人口の食料をカバーするためには現在の食料生産量の70%以上増産しなければならないとされている。
AgTechスタートアップの資金・技術援助を行うベンチャーキャピタルのInnovation Endeavorsは、フードシステムの見直し、およびどのようにこうした人口増加に対応していくかということに対しての起業家たちの意識に感化されたと述べている。農場からフードプロセスの段階までのイノベーションに挑戦する起業家たちを見て、彼らは以下の3つのことがわかったという。
1.フード産業と農業にはイノベーションの起こる領域が十分にあるということ
農業に関する先端技術に関わる企業は増加している。例えば遺伝子操作やロボット工学、機械学習、画像処理など。これらすべてのテクノロジーに渡って共通項のテーマは、植物から農場までのすべての、より多くのデータをかき集めることだ。そのデータとは、今までは農場管理や廃棄を減らすことの効果を高めることにつながった。しかしまだ先はある。食料、そして農業マーケットは、新しいテクノロジーが適切にレバレッジされていないのだ。今後自動化されるような、データをExcelに打ち込んだり、紙とペンを使ったりということがまだ行われている。GranularやFarmers Business Network、そしてOnFarmといったスタートアップは、データを集積し、有効活用することを支援する。こうしたスタートアップが礎を築いたように、今後もさらなるイノベーションが生まれ、農業のランドスケープに本当に優位性のあるテクノロジーから利点を得ることができる。
2.より早くマーケットに到着し、よりよいディストリビューションチャネルが存在する
最近までの農業マーケットの構造は、成長が遅くなりがちだった。農作物の仲介業者を介した断片化されたディストリビューションプラットホームのために、農業という産業は効果的かつ効率のよい販売形態が、2エーカー（0.8ヘクタール）以下の農地を持つ小規模農家に対しては確立されていなかった。こうした小規模農家は、農家全体の8割以上を占めるのだ。しかし、農家と消費者をダイレクトにつなげる方法がある。AgTech産業は他のセクター同様の成長をなすことができるかという議論を行った後、我々はマーケットへのクリエイティブなルートと投資家の正しいサポートでそれは可能だと結論付けた。
3.価値を示せるかどうかが成功への鍵である
我々は何年もの間、農業の価値創造について多くを学んだ。投資リターンが急がれ、明らかなものにならなければならないこの産業で、価値を示すことは重要なことである。しかし農業という多因子の自然を扱うには、なにか一つのテクノロジーのおかげとするのは難しい。どのように価値を測定するのか、どのメトリクスを使うのか、どのデータを集めるのか、そしてどのように特定のテクノロジーおよび変化にリンクするのかということを知ることは重要である。あるテクノロジーは作物モデリングを発展させるだろう、その他のテクノロジーは、データを集め、そのデータを解析し、バックエンドの結果を測るだろう。
もしかすると、いま我々は農業が活性化された産業へと変換するところを目の当たりにしているのかもしれない。慣行農業ではハイリスクな意思決定とPDCAを回す回数が少ないことが特徴付けられる。しかし、こうしたリアルタイムデータなどが、この現状を変えつつあるとInnnovation Endeavorは述べている。
＜関連記事＞
・アメリカ農業不振にもかかわらず、AgTechへの2015年の投資額は2倍に
参考：http://www.innovationendeavors.com/thoughts/agriculture-the-next-agile-industry
関連記事
ASEAN諸国でIoTを用いた スマートファーミングへの動き
90年に一度のベトナム干ばつ被害に、コメの育種で対応
クボタがドローン市場進出へ、国内農機メーカーの参入相次ぐ
