農業 x ビッグデータ！ビッグデータを農業に活かす企業に迫る part2
Editors Note: This article was originally published on AgFunderNews, the online publication of AgFunder an investment platform for food and agriculture technology.
前回の記事では「農業xビッグデータ」の視点から、その概要と今後の課題についてお伝えした。今回はAgFunderが注目する農業ビッグデータビジネスを展開する8つの企業をご紹介する。
前回の記事はこちら”農業 x ビッグデータ！ビッグデータを農業に活かす企業に迫る part1”
今回紹介する8つの企業は全てベンチャーキャピタルからの資金調達に成功している企業だ。今日の農業ビジネスに利用できるさらに先進的な商品を提供している。そしてビッグデータ界隈での様々なテクノロジーをミックスさせている。
1. The Climate Corporation
データソース
公的機関からのデータや個人的データ、農家がオペレーションに用いるのに必要なデータ
プロダクト
ソフトウェアとハードウェア
ターゲット
農家
The Climate Corporationはカリフォルニア州サンフランシスコで”FieldView”というアプリケーションを提供する企業だ。ソフトウェアでは、”The Climate FieldView platform”というアプリケーションを開発。土壌や作物、天気といったデータと農家のフィールドデータを組み合わせ、管理をマネージメントし、フィールドに関する今後の見通しを立てる。ハードウェアでは、精密農業用のキットを販売している。
特徴的なのは、農家の「経験」と独自にセンサーや人工衛星から収集したデータとのコンビネーションを実現していることだ。 同社のマーケティング担当Anthony Osborne氏は、最も大きな課題はどのリソースを一番フォーカスするかを決定することであると話している。顧客が次のシーズンを考え始める時、作物の栽培を始める時、収穫を行う時という顧客のエコノミクスに重大なインパクトを与える意思決定のタイミングを同社は認識しているという。その全てを解決するのではなく、最も重要な意思決定を優先させることが課題なのである。
2. aWhere
データソース
aWhere独自の気象観測データや人工衛星からのデータ
プロダクト
データサプライヤー
ターゲット
仲介業者やソフトウェアプロバイダ
アメリカ・コロラド州にあるaWhereは、農業データを仲介業者やソフトウェアプロバイダに提供している。そういった顧客が農家へのアドバイスを送る際の材料としてaWhereのデータを使う。ビッグデータは異なるソースを掛け合わせて、最適な土地とタイミングで最良の決定をすることができるようにすることができる。同社CEOのJohn Corbett氏は、グローバルな気象の変化が農業をよりグローバルなものにするため、今後ビッグデータが世界の食料の生産と供給を支えるだろうと考えている。
3. FarmLogs
データソース
公共機関の気象データ、航空写真、FarmLogsのハードウェア、農家からのデータ
プロダクト
ソフトウェアとハードウェア
ターゲット
農家
アメリカ・ミシガン州にあるFarmLogsは、提供するデータがすでにアメリカの農家の3分の1に利用されているという。今急激に成長を遂げているベンチャーだ。ソフトウェアではデジタルフィールドモニタリングソフトウェアとアプリケーションを提供し、ハードウェアではソフトウェアに自動的に接続し、簡易の収穫マップを作成するデバイスを提供している。農家がよりよい、データドリブンの決定を下すことができるよう、データセットや大量のデータを発掘、回収、分析するためにソフトウェアやデータサイエンス、機械学習といったテクノロジーをフル活用している。データを顧客である農家に単に与えるだけではない。農家がソフトウェアを扱いやすいようにしている一方で、営農管理にインパクトや価値のあるものを提供している。
同社CEOのJesse Vollmar氏は、FarmLogsはビッグデータからどのように農家に価値を抽出できるかにフォーカスしていると話している。あくまでビッグデータはFarmLogsのサービスの材料にすぎないといった印象を受ける。
4. OnFarm
データソース
栽培者に代わってデータを集めるデータパートナー
プロダクト
ファームマネジメントツールのソフトウェア
ターゲット
農家
OnFarmは多くの異なるソースからデータを分析し表示する、ファームマネジメントツールアプリケーションをサービスとして提供している。栽培を行う人は栽培地域をはじめ、皆条件が異なる。このファームマネジメントツールのドラッグ・アンド・ドロップダッシュボードでは、農家が必要とするデータモデルや分析、データセットのタイプを取得することができる。同社CEOのLance Donny氏は、農家はデータを欲しがっているのではなく、圃場の何に気をつけ、どう対処するべきかを知りたがっているのだと話す。同社のアプリケーションは、圃場の特定の場所における問題点をマップ上で知らせてくれるのだという。
5. FarmersEdge
データソース
独自製品のハードウェア、大学、公共機関、キーパートナー、キーサプライヤー
プロダクト
ハードウェアとソフトウェア
ターゲット
農家
カナダのFarmersEdgeのサービスは専有のハードウェアや顧客の所有するハードウェア、OEMのハードウェア、埋め込み式そソフトウェア、そして同社の持つ専門知識を有効利用している。同社CEOのWade Barnes氏は、他社はクラウドからデータを見つけ収集しているのに対し、データをフィールドから収集することをコンセプトにしているのだという。シリコンバレー創業の農業ビッグデータ関連の企業は、もともとは他業種から農業にビッグデータを生かそうと参入してきた企業が多い。一方でFarmersEdgeは農家とやり取りをしている。そうした強みを生かし、農家目線のサービスを提供し、栽培を行う人にとって効果的なソリューションを提案する。
6. Agribotix
データソース
ドローン、自社保有の気象データ
プロダクト
ソフトウェア
ターゲット
農家や仲介業者
Agribotixは、扱うデータの60%以上をドローンから収集するという、これまで紹介したタイプとは異なるタイプのビッグデータビジネスだ。ソフトウェアを扱う企業で、データプロセッシングに強みを持っている。もともとソフトウェアを扱う企業であるため、ドローンというハードの部分は必要な分だけのノウハウがあるのだという。直接的な顧客は農学者やトラクターの販売業者、収穫コンサルタントだという。また農業以外のさまざまな産業に用いることを目的として、サービス提供者が同社のドローンを購入するのだという。
7. AgDNA
データソース
データライセンスを結んだトラクターメーカー、ユーザーデータ、スマートフォンやタブレットの画像、GPSデータ
プロダクト
ソフトウェア
ターゲット
農業機械の販売業者や農家
オーストラリアのAgDNAは、主に大規模な農機ディーラーにサービスを提供している。いわばB2B戦略である。直接的な顧客は農機ディーラーということになるが、AgDNAと契約した農機ディーラーはさらにその顧客に対して独自のデータ管理ツールを提供しているということだ。このサービスの利点はデータのライセンスが農機メーカーにあるため、ディーラーはすでに農家の圃場にある農機にシームレスにシステムを提供することができるという点だ。データは全てクラウドから取得し、そのデータはオンラインのブラウザかアンドロイドやアップルのスマートフォンやタブレット端末から取得可能である。
8. Conservis
データソース
農家の持つデータ、気象データ、プライベートデータベース
プロダクト
ソフトウェア
ターゲット
農家
Conservisはミネソタ州でファームマネジメントソフトウェアを提供する企業だ。農薬の適応範囲を示した外部のデータベースにアクセスし、農家がどの種類の農薬を、どのぐらいの量で、どういった方法で散布するのか、また散布する時間の気象状況がどうなっているのかを集約している。
同社は農家にとって有益なデータや情報を提供することにフォーカスしており、農家自身が持っている独自のデータを有効活用して進むべき道を決めるデータを集約することがゴールだとしている。企業の将来的ビジョンとしては、農家を助けるために必要なこととは農家のもとに集まる情報の全てを理解し、結論へと導くことだと考えている。
以上8社をご紹介したが、いかがだっただろうか。8社はアメリカ、カナダ、オーストラリアのいずれかの国の企業だったが、どの国も日本とは農業のスタイルが大きく異なる。つまり、農業ビッグデータ分野で勢いのある今回紹介した企業のようなビジネスが、日本の農業でも同じように機能するかといえば、答えはノーである。
今後AGRI in ASIAでは日本の農業テクノロジーに関するイノベーションについてもたっぷりと取り上げていく予定だ。
Link：https://agfundernews.com/what-is-ag-big-data5041.html
関連記事
農業用ドローンスタートアップが好調 ドローンを用いる効果とは？
【日本初】電解水設備を導入したオランダ式大型ハウスで園芸農業モデル施策始動
仏DigitalFoodLab社、 フランスのフードテックに関する初の調査結果を･･･
