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モンサント:AIを活用した農薬開発のためアトムワイズと共同研究

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モンサントアトムワイズは、人工知能を活用し、農薬製品の発見・開発のスピードと可能性を高める目的で、共同研究を立ち上げた。

「モンサント」の名を知らない人は農業従事者の中にはいないだろう。種子や農薬の業界では世界一の影響力を持つ会社の一つであり、遺伝子組み換え種子のパイオニアといえる会社だ。そのモンサントが昨年独バイエル社に買収されたことは記憶に新しい。

一方のアトムワイズは、有望な化合物の分子の発見に用いる人工知能システムを開発しており、その技術を利用して新薬や新しい農業用化合物の発見を支援している。独メルク社やハーバード大学など革新的な組織と共同ですでに27のプロジェクトを開始しており、エボラ出血熱、多発性硬化症、白血病のほか、新たにカビや線虫といった多様な対象分野においても研究を進めている会社だ。

アトムワイズの画期的なAtomNetテクノロジーは、強力なディープラーニングのアルゴリズムとスーパーコンピュータを使って人間の科学者と同じように理由付けを行い、一日に数百万の候補分子を分析することができる。今回の共同研究は、そのAtomNetテクノロジーを活用して農薬製品につながる可能性のある分子を見つけ出す、という内容である。

モンサントの農業生産性イノベーション責任者Jeremy Williams(ジェレミー・ウィリアムズ)は、「生育期毎に、世界中の農業生産者が害虫や病害から収穫を守ろうと闘っている。一方、平均的な農薬製品を商品化するには最大11年、2億5,000万ドル以上の時間と費用がかかる」としたうえで、「新しいソリューションの発見は極めて重要であり、この共同研究は、必要とされる農薬ソリューションを迅速に生産者にお届けするのに大いに役立つと期待される」と述べる。

またアトムワイズの最高経営責任者であるAbraham Heifets(アブラハム・ハイフェッツ)博士は、「増加を続ける世界の人口に対する食糧の供給は、人々の健康にとって喫緊の優先課題であり、私たちはあらゆる利用可能な技術を動員しなければならない」としたうえで、「アトムワイズは、人工知能を武器に致死性の疾患と闘ってきた。私たちが学んだすべてを使い、その知識を食糧供給を妨げる破壊的な害虫・病害との闘いに活かしていく」と述べている。

従来の試行錯誤や消去プロセスを使って何万もの分子を分析するのとは違い、AtomNetテクノロジーが目指しているのは、様々な分子がどのように相互作用するかを分析し、分子レベルでの発見の第一段階を効率化することである。AtomNetは、ディープラーニングを用いて、どの分子が病気や害虫の防除に効果を持つ可能性があるかを予測し、分子レベルでの発見のプロセスを加速させる。人工知能が画像認識を学習するのと似た方法でパターンを特定することによって、ソフトウェア自体が分子の相互作用について自己学習する。

「アトムワイズには最先端の人工知能システムがあり、他方、モンサントには植物育種・植物バイオテクノロジー・農薬・農業用生物製剤・データサイエンスプラットフォームの統合を通じた、実環境での検証を応用する能力がある。両社を組み合わせることで、山積する環境課題に対して、収穫の改善、作物の保護、社会への供給増に取り組む生産者を支援する技術を開発することができる」と、Williams(モンサント社)は説明している。

モンサントは、アトムワイズと提携する農業分野で最初の企業となった。アトムワイズのAIを活かしてどのような新しい農薬が生み出されるのか、今後も世界中で注目を集めるだろう。

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