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フランス国際農業見本市から見るフランス農業 (1)

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※トップ画像引用:https://en.parisinfo.com/ou-sortir-a-paris/info/guides/salon-agriculture-paris

 

2/24-3/4の間、パリでは国際農業見本市が開かれている。サロンドアグリカルチャーと呼ばれるこの農業見本市には、世界中から人々が訪れ、初日にはマクロン大統領も姿を見せるなど大規模に行われる。

このイベント初日に訪れたAgri in Asiaライターの深澤がその様子とイベントを通して見たフランス農業について2回に分けてレポートしたい。

 

会場は大きく6つのパビリオンに分けられている。(理由は不明だが各パビリオンの数字は1~5.7となっており6がない)

1.酪農、畜産

2.競走馬、農業文化

3.食品、飲食店

4.アグテック(アグリカルチャー4.0)

5.各地域、各文化の食

7.犬、猫

 

メインとなる会場は①の酪農・畜産関係の会場だ。

 

 

会場内には肉牛、乳牛、豚、羊、ヤギなどが会場内に設けられた柵の中に入っており、その迫力は目を見張るものだ。どの動物も9日間この会場にいるため、ストレスがたまらないように順番に数頭ずつ会場内を散歩して歩くのを見るのも来場者の楽しみのようだった。

 

 

動物たちの周りにはチーズやミルクの試食・販売やハンバーガーの販売といった実際の食品のコーナーや、放牧されている牛が食卓に届くまでのムービーを上映しているブース、子どもたちのクイズコーナー、また酪農や畜産に用いる農機具のコーナーなど、関連する様々なものが集結している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初日には、この会場にマクロン大統領が姿を現し、たちまち人だかりができていた。マクロン大統領のもとには政府の農業政策に不満を持つ農業生産者たちが殺到して南米とEUの貿易協定について、グリホサート系農薬の登録についてなど、数年来議論され続けている農業政策の問題について、大統領には大きな怒号が向けられていた。一方で一般客をかき分けて会場を見て回る大統領の下には子どもたちを中心に多くの人々が集まり握手したり一緒に写真を撮ったりと彼を支持する人々であふれていた。マクロン大統領はこの会場に12時間以上滞在していたそうで、このイベントがいかに重要で影響力の大きいものかがわかる。

 

この会場で驚くべきは動物たちの種類の豊富さである。4000頭以上集められた動物たちはその数はさることながら本当に多様な種がそろう。特に牛の種類の豊富さは印象的だ。

日本には和牛と呼ばれる肉牛の種類が4種いるが、フランスにはおよそ20種存在するという。

伝統的にも現在の食文化的にも肉食の盛んなフランスではその多様さも当たり前なのかもしれない。

しかしそんなフランスでも、2000年にフランスをはじめ欧州中にパニックを引き起こした狂牛病の影響で一時は畜産業の勢いが衰えたこともあったという。interbevlaViandeといった畜産業者らの組合は、このようなイベントの機会を重要視し、人々に牛を育てている過程や食肉加工の様子などを紹介したり、子どもたちに産業や食の尊さを伝えるためのコンテンツなどを提供していた。

 

メイン会場の次に混雑していたのは③の食品、飲食店の会場だ。ここではチーズ、ミルク、ヨーグルトといった乳製品、サラミやハムといった加工肉製品、パンや焼き菓子といった小麦製品、ビールやワインといった酒類など様々な食料品が販売されている。

このような食料品に対し、フランスでは様々な評価ラベルがつけられている。食品品質保証のラベルルージュ、高級ワインの品質保証を目的に始まり現在は幅広く食品の品質保証を行うAOC、食品の地域性を認める

IGP、農業コンクール受賞など評価ラベルの種類の多さはとても興味深い。

評価ラベルがどれほど人々の購買の選択・決定に影響を与えているかは計りかねるが、このようなラベルが多く生まれ、サロンドアグリカルチャーに大きな広告やブースを出しているところから食文化への関心や誇りの高さがうかがえる。

 

メイン会場や食料品の会場を見渡すと、子どもを連れた家族や年配の方々も多く、ビジネス的な雰囲気はほとんどない。サロンドアグリカルチャーの開催目的の1つは農業や食への理解を深めることだというが、食農文化の多様さを人々に広く伝えるという重要な役割を果たす空間だった。

 

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