みずほ銀行ら、乳牛による「和牛の代理出産」を可能にする畜産イノベーションに5000万円出資
百五銀行やみずほ銀行が出資する「百五6次産業化ファンド」は、国内の和牛子牛不足を解消するべくAGエンブリオサポート株式会社に5000万円出資することを決めた。
この資金を用いて、大酪農・畜産地帯である北海道十勝地域に体外受精卵培養センターを建設し、ここでAGエンブリオサポート株式会社は新鮮な体外受精卵を一貫大量生産する体制を整備する。将来的にはその技術を三重県へ持ち帰り、「松坂牛」や「伊賀牛」などブランド牛の子牛を肥育する生産基盤構築において重要な役割を果たすことが期待される。
プロジェクトスキームは以下の通りだ。
1) 経腟採卵
和牛雌牛から卵子を採取。生体から卵子を採取する最新技術を用いる。
2) 受精卵製造
良質で安価な、和牛の対外受精卵を製造
3) 受精卵をホルスタインに移植
酪農が盛んな北海道十勝地域のホルスタイン種(乳用牛)に移植。
4) ホルスタインが借り腹出産
5)和牛子牛生産
近年問題に上がる子牛の生産農家減少
子牛の生産を担って来たのは規模の小さな高齢の農家が中心であった。高齢化に伴い、子牛生産農家の離農が相次ぎ、ここ2011年から2016年の5年間で3割近く減少している。2015年の和牛子牛の買取価格は1頭平均65万円であったが、翌年は平均86万円、最高で102万円まで跳ね上がった。スーパーの国産和牛が急速に値上げしている背景にはこんな現状があったのだ。
この問題の解決計画として上がったのが北海道での生産である。2016年2月には50頭の和牛が、一大産地であった九州から酪農王国・北海道に到着した。寒暖の差という大きなリスクを抱えながら、なぜ北海道に生産拠点を移したのか。大きなメリットはコスト削減である。九州では牛のエサの輸入やふん尿の処理に莫大な費用がかかっていた。それが北海道では、広大な土地を利用してエサを安く生産できる上、ふん尿も牧草の畑に堆肥として用いることができるため、処理費用も安く済むのだ。
今回みずほ銀行らが出資した畜産イノベーションは、さらに北海道の乳牛で「和牛の代理出産」を行い、和牛のコストを下げ持続可能な生産基盤を作ることを目標とする。海外での和牛の人気も高まっている昨今、畜産イノベーションへの期待が高まる。
Link: https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20170428release_jp.pdf