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AGRIBUDDY北浦 健伍さん:カンボジアで農業『農家が豊かになるために』

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北浦 健伍さん

1971年、大阪府生まれ・カンボジア在住。中学卒業と同時に渡米し、カリフォルニア州アナハイムのウエスタン・ハイスクールに転入。帰国後、消費者金融会社経営などを経て2010年よりカンボジアに移住。AGRIBUDDY Ltd.の最高経営責任者。

 

AGRIBUDDYのサービス

カンボジア、インドをフィールドに農家の草の根ネットワークを構築し、スマホアプリを使って農業に必要なデータの収集・分析することによって農家が金融機関から融資を受けることを可能にし、最適なタイミングで必要な農業資材のクレジット販売を可能にしている。またマーケット情報やノウハウ、最新の農業資材など、今まで小規模農家がリーチできなかった科学的で正しい情報の提供により、農家の余分なコストとリスクを減らし生産性を最大化している。

 

事業を始めたきっかけは何だったのですか?

元々は金融業をやっていたんですが、それはあまり人がハッピーにならない仕事でした。でも同じ金融の仕事でノーベル平和賞を取った人がいました。グラミン銀行のムハマド・ユヌスです。自分の仕事と彼の仕事を比べてモヤモヤした気持ちになったものです。そんな時にカンボジアに旅行にいきました。実は昔からやりたいことが3つあって、カンボジアはその全てを持っていたんです。1つ目が海外で勝負すること。2つ目が社会にインパクトを与えること。3つ目が日本の戦後のような何もないところで勝負することでした。カンボジアは英語も通じるし、足りないものが多すぎて何をやっても人の役に立てそうでした。その後ASEAN全て周ってみてやっぱりカンボジアにしようと決めたんです。

とはいえまだ何をするかは決めていませんでした。カンボジアには、旅行者相手のゲストハウスを経営している人やボランティアをしている人などいろんな人がいました。ある時孤児院に行く機会があって、ボランティアなんてしたことがなかったので興味が湧いて、そこで日本語教師のボランティアをすることにしました。その経験の結論は「ボランティアでは変わらない」ということでした。お金をめぐるトラブルは多いし、寄付で成り立っているために持続可能性として弱かったんです。それで孤児院の経営者の息子とビジネスを始めることにしました。何のビジネスをしようかと考える時にカンボジアの暮らしを見つめ直しました。カンボジアの人々って昼間からぶらぶらしたり昼寝したりしているんだけど飢え死にはしないんです。貧困=飢餓ではありませんでした。働かずともご飯が食べられるんです。そんな人が今より少し頑張ったらすごく豊かになるんじゃないかと。ちょうど世界では食糧危機が起こっていて農業の大切さが再認識されているところでした。それで農業に絞ったんです。どんな農業をやろうかと考えた時にせっかくだから日本ではできない大規模な農業を、しかし日本らしく正確にやろうと思いました。

いざ始めてみて大変だったことはありますか?

データがめちゃくちゃだったことです。まずは農家の現状を把握しようと調べたり、実際に聞き込みに行ったりしたのですが、調べた数字と実際の数字にかなり差がありました。要は、誰もわかっていないんです。自分の畑の収穫量とか畑の面積とか適当な数字を言っているのでもう一度聞きに行くと違う数字を言ってきたりします。農家自身がデータ無しで農業をやっているというのが困ったことでした。

それで農家のデータ管理を可能にするサービスが生まれたんですね。

そうですね。でも最初は今の形ではなく、1000ヘクタールくらいの大きな畑に農家さんを従業員として雇っていました。ただ8年前の当時は日給3ドルくらいだったものが、国の発展とともに街の工事の仕事が10ドルくらいで人を雇うようになって農家の日給も倍くらいになったんです。カンボジア人と一緒に豊かになりたいと思って始めた事業なのに、日給が上がってカンボジア人が豊かになると困ってしまうのでは本末転倒です。そんなこともあって、次第にこの頃に大規模の畑に従業員を雇うことは自分たちの目指す事業ではないと思うようになりました。それで、小規模の農家を支援するサービスを始めたんです。

そもそもなんで農家は貧しいのでしょうか?

それは、経済の輪に入れていないからです。例えば日本なら、クレジットカードやローンがありますよね。それができるのはその人がいくら給料をもらっているかわかるからです。カンボジアの農家の場合は誰も彼らの収入を知らないんですね。もちろん本人たちも。だから金融機関からは相手にされないんです。つまり収入サイクルを全て把握したら金融機関からお金を貸してもらえたり、投資を受けたり出来るようになるわけです。農業はそもそも事業であり、日銭商売ではなく投資業です。未来の利益(収穫)に向かって投資し続ける。農家は日々のお金もないのに投資しなければいけない状況に陥ります。だから本来当たり前に必要とされている肥料をあげるとか重要な投資ができなくなってしまうんです。結果、本来取れるはずの収穫もできず半分くらいの収穫量しかなくなってしまいます。それはサボっているのではなくてやらなきゃいけないことができていないからです。私たちの事業はそこをカバーするものになっています。

その事業の具体的な仕組みを教えてください。

農薬のクレジット販売の説明会に集まる村人

まず、会員の農家に専用のアプリで農地の面積や作物の種類を入力してもらい、収穫 量や収入を予測します。収穫時期と販売時期を予測することによっていつ収入があるのかわかりますし、植えてから収穫までどこでお金を使うのかを把握ですることによって農家たちはその時にお金を借りて収穫時期に返すことができるようになります。これまで新興国農村に根付いていた顔見知り同士のお金貸や信用販売取引は金利が高すぎるしスケールしないので、信用構築の仕組みを可視化しているんです。例えば肥料や苗もAGRIBUDDYから買って、収穫時期にお金を払うという後払いが可能です。実際のローン提供の仕事は地元の銀行と提携して、日本の物販ローンのような仕組みになっています。

日本人がアジアや世界に進出する時に気をつけたほうが良いことはありますか?

マネジメントに注力するということですね。日本人は一般人のレベルが高いため、労働市場の人々が全体的に粒が揃っていてマネジメントをせずとも事業が周ってしまいます。日本では優秀な人とそうでない人の差が大きくありませんが、途上国はその差が大きく、世界には優秀でない人の方が多いということを考えなければいけないと思います。

日本の農業に思うことはありますか?

どこで何を作るか、というのをもっと柔軟に見てもいいのではないかと思っています。もっと都市近郊で作られる作物が増えていいと思うし、少量しか必要がなくて付加価値の高いものは都市近郊で作って、大量に必要なものは農地のある田舎か海外で作る、みたいな使い分けも考えられると思います。日本の農家さんだったら付加価値の高い作物を作ることはできると思うんです。他国とヘクタールあたりのGDPを比較すると、日本は11,725ドル、付加価値の高い作物を作るイスラエルは20,059ドル、大規模農業のアメリカは1,658ドル、カンボジアは600ドル以下という数値になっています。何をどのように育てるかでここまで変わるんです。こういうことも踏まえてもっと柔軟に見ることが必要なのではないかと思っています。

大変興味深いお話で、もっとお聞きしたくなりますね。

宣伝になってしまいますが、5/23の15:30からAG/SUMにてインドで高品質なイチゴ栽培を手がける株式会社GRAの岩佐さんとワークショップをするのでよかったらぜひ。

ありがとうございます。最後に日本の読者の皆さんに一言お願いします。

農家が起業家精神を持って世界に進出したり、いい意味で“”日本人“らしくない人が増えると面白いんじゃないかと思います。AGRIBUDDYでも現地でリサーチャーとしてバリバリ動いてくれるインターン生を積極募集中です!長期で(2ヶ月〜)一緒に働いてくれる方がいたらぜひご連絡ください!

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