インド:IoT農機とスマホアプリを用いた農機作業マッチングサービス「Gold Farm」が150万ドルの資金調達へ
農機作業マッチングサービス「Gold Farm」とは
インドの太陽光灌漑ポンプのベンチャー企業であるSurya Power Magic社(コーヤンブットゥール市)は、農機作業を必要とする農家向けに農機作業マッチングサービス「Gold Farm」の提供を開始した。
このサービスにより、農家は、牛もトラクターも耕運機も播種機も収穫機も所有する必要がなくなる。スマートフォンアプリ「WhatsApp」を使って、予約センターに一本の連絡を入れ、農業機械サービスを外注すればよいからだ。
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IoT農機とスマホアプリを用いたビジネスモデル
「Gold Farm」のビジネスモデルは、アプリを通じて、予約センターが委託希望情報を把握し、農機作業者へ注文を取り次ぐ仕組みだ。農機作業者は、この仕組みで新しい仕事を得ることが出来るため、農機への投資回収は2年程度になる。
「Gold Farm」は様々な農機作業を委託できる。ロータリー、ディスクハロー、ティラー、プラウなどを用いた作業がメインの対象だ。特徴は「時間単位課金」であり、作業料金の料率は農務省や自治体の基準により設定される。
IoT農業機械とモバイル端末を用いた仕組みも特徴である。農業機械の稼働時間や位置、消費燃料などの農業機械情報をセンシングし、アワーメーターを基にした独自の課金体系で委託農家に請求書や領収書をオンラインで発行する。「Gold Farm」の運営側は一部の手数料を取得することで収益化を行う。初年度の手数料売上目標は日本円換算で約900万円だという。
さらに、この仕組みを加速させるために農業機械の購入に際して、州政府から最大75%の補助金を得ることができることも追い風だ。補助金で仕組みの普及を加速させることで、利用者が増え需給マッチングの精度が向上する。
このサービス「Gold Farm」の強みはどこにあるのか。それは、このサービスのコンセプトが需要対応マッチング型であることから読み解ける。例えば「Uber」や「Olashare」のような仕組みをイメージしてもらえると想像しやすい。
農家による委託希望作業ニーズは非常に細分化されており、細かいニーズに対応できることが重要である。受託側の農機作業者は、ニーズをアプリで確認してトラクターのアタッチメントを準備する。高額な大型トラクターを遊休状態にさせずに働かせることで、投資回収の早期化を目指す。
この仕組みは、農業界の大きなトレンドになる可能性がある。なぜなら、近年農業分野では、労働力不足と人件費高騰が大きな課題として迫ってきているからだ。
「Gold Farm」のような農業機械とヒトの稼働率を高める仕組みは、マヒンドラマヒンドラ社の子会社であり農業機械のレンタルを行うTrringo社のサービスと競合する。
利用者の声
利用者の声を2つ紹介する。コラール地域の小規模に営農を行う農家であるPrakash氏は、とうもろこしを植え付けるために、繁茂していたワサビノキを撤去し整地すべくこのサービスを利用した。利用方法は簡単で、コールセンターに電話すれば、大型農業機械とともに作業員が来る。効率的な大型農業機械で作業を行うため、ほんの数時間で作業は終わる。料金は、従来の面積単位課金ではなく、時間単位課金であるため効率の高い大型機械で行うことで、結果的に30%も安価だったという。
また、ヤナダハリ村の大規模農家であるBhaskar氏は、耕起作業を依頼した。同氏も、口コミでサービスを聞き、試しに利用してみたところ、従来型の業者に比べて安価に出来たという。
今後の展望
インドでは、労働力不足や賃金高騰により、機械化や農地集積が加速していくことが予測されている。
このような流れは、「Gold Farm」のような農機シェアリングエコノミーを仕掛けるベンチャー企業にとってはチャンスである。「Gold Farm」は既にInfuse Ventures社、Kshatriya Ventures社、Waaree社などの企業から約50万ドルの資金調達を得ているが、 今後さらに150万ドルの資金調達を行い、対象地域をさらに拡大させていく方針だ。