ソルガムという植物をご存じだろうか。日本ではあまりなじみがないが、飼料作物として世界的に広く栽培されている作物だ。
現在、オーストラリアのソルガム農家が、中国のトウモロコシ政策に翻弄されかねない事態になっている。その影響について見てみよう。
【目次】
- オーストラリアのソルガム市場の概況
- ソルガム市場における、オーストラリアと中国のこれまでの関係
- 中国農政の変化で揺れる、オーストラリアのソルガム農家
| 1. オーストラリアのソルガム市場の概況
ソルガムは、オーストラリア国内で重要な位置を占めている。
同国では作物は主に夏栽培と春栽培に分かれているが、ソルガムは夏栽培の穀物のうち、作付け面積で6割(603千ヘクタール)を占めている。収穫時期は3~4月。栽培地は東海岸がメインだ。
| 2. ソルガム市場における、オーストラリアと中国のこれまでの関係
オーストラリア産ソルガムの主な輸出先は中国。畜産用飼料として使われている。同国間の販売価格は、中国での需要と、オーストラリアでの輸出余剰量で決まる。輸出余剰量は今期で70万トンに及ぶとされている。
ソルガムの中国でのライバルは、同じ飼料用作物のトウモロコシだ。畜産農家は双方の価格を比べ、安い方を購入する。だが、これまでトウモロコシはそれほど強いライバルではなかった。中国政府がトウモロコシの輸入量に制限をかけており、トウモロコシの価格がソルガムのそれに比べて高かったためである。そのため、中国の畜産農家はオーストラリアから大量のソルガムを輸入していた。
| 3. 中国農政の変化で揺れる、オーストラリアのソルガム農家
ところが、中国政府は最近になってトウモロコシの輸入量制限を緩和。さらにトウモロコシの主要産地であるアメリカで豊作が続き、トウモロコシの価格は年々下落した。トウモロコシの価格がソルガムに近づいてきたのだ。ソルガムはその中国での地位を脅かされるようになってきたわけである。
中国での売れ行き不調にそなえて、オーストラリアのソルガム輸出業者は在庫を減らすようになってきた。当然、ソルガム農家はその悪影響を受ける。ソルガムのオーストラリア国内での販売価格が下落したり、農家が大量の在庫を抱えなくてはならない可能性もある。ソルガム農家は現在、海の向こうの中国農政に注意を払わざるを得ない状況だ。
参考:
http://www.agrimoney.com/news/nidera-australia-flags-uncertain-chinese-sorghum-demand–9555.html
Australian Government Department of Agriculture and Water Resources: Australian crop report: June 2015 No.174
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