農業用ドローンスタートアップが好調 ドローンを用いる効果とは?
Editors Note: This article was originally published on AgFunderNews, the online publication of AgFunder an investment platform for food and agriculture technology.
データ提供会社CBインサイトによると、2015年度にドローンは74の投資に活用され、4億5000万ドル以上の資金を調達した。2014年度と比較すると300%の増加である。
シリーズBで最も大きな調達額7500万ドルに貢献した中国のDJIは、11月に農業に特化した最初のドローンを立ち上げた。DJI Agras MG-1は防塵、耐水性、および折り畳み式防錆材で作られたスマートな作物農薬散布用ドローンである。農薬散布デバイスにおいて、DJIが市場で初めての企業というわけではない。2015年5月に、すでに日本の稲作農家によって使用されていたヤマハの207ポンド遠隔操縦RMAX農薬散布ヘリコプターの使用がFAA(連邦航空局)により承認された。
DJI 農薬散布ドローンが派手な宣伝と共に世界メディアに取り上げられた頃、大規模農家ではこのドローンの有効性に疑問符がついていた。DJIによると、理由は限られた飛行時間わずか12分と運搬容量可能な重量が液体で10㎏しかないためである。広報担当がAgFunderNewsに伝えたところによると1時間で60エーカー(約24ヘクタール)しかカバーできないことになる。2012年農務省国税調査から米国の農家平均敷地面積は418エーカーなので、米国の農作地にAgras MG-1は適さない。
DJI広報担当者は、UAVは大規模農家を対象としておらず、小規模および中規模農家を対象に設計したため、まずは中国の小中規模農家で開始することを公表した。
「少量積載量と適用範囲の狭さでは我々の農作地では使用不可能であろう。」サリナスバレーで4200エーカーの農地を運営する「シャイドビンヤード」のプロジェクトマネージャータイラー・シャイド氏は述べている。
さらにシャイド氏はやみくもに広範囲でなく、迅速、かつ正確に十分な量、特定場所が指定できれば、農薬散布ドローンは興味深いものになるだろうと論じた。「どちらにしろ、まだまだ技術が追いついてない。」SFに助長されているのは疑いの余地もないが、誇大広告の中、果たしてドローンは今日の農業においてどれだけの効果が実際に期待できるのだろうか?
ドローンは一部の農家にとって農薬散布の肉体労働の代わりになると期待されているが、ほとんどのドローンは農作地や作物状況の画像撮影に起用されている中で、DJI Agras MG-1は、変わり種に過ぎない。それが疑問噴出の原因となり、バッテリー耐久時間、規制、アグリビジネス展開コスト、投資のリターンおよび画像やデータ工程作業への疑問を投げかけるきっかけとなった。
「農業用途としてUAVを2008年以来使用してきたが、限界を感じている。おそらくそう感じる人は多いだろう。」とデジタルハーベスト社の最高経営責任者(CEO)であり、農業技術者、およびコンサルタントであるヤング・キム氏が語った。彼はもともとBOSH Precision Agricultureでシンプルなドローンビジネスを立ち上げた人物である。「今特定の分野でのみ使用しているが、UAVのみではビジネスは成り立たなかった。人も必要だし一度に数百エーカーの狭い領域にしか使えなかった。」
撮像のためのドローンの主な利点は、ドローン自体の低空飛行により高解像度のデータを取り込むことが可能な点である。農作地の詳細を見極めるのに重要であるにもかかわらず、飛行機、特に衛星は、ドローンと同等の詳細度を持っておらず、天候に左右されやすく、撮像能力にばらつきがある。
しかし、農業のために有用な画像について標準の設定がなされていない、とAgTechインサイト、コンサルティング会社でビジネス開発・戦略を統括するジェームス・ハント氏は主張する。
「NDVI、赤外線、および温度は、追跡可能な多変数である。どの画像が有用であるか、また実用的な洞察力を生みだす意義あるソフトウェアプラットフォームに組み込む方法についてなど、提案や推論がまだたくさんある。」と彼は述べている。
英国農業耕作者であるアンドリュー・ウィリアムソン氏は作物の健康に関する情報を提供可能なマルチスペクトル画像のうち、値を取得するプロセスが多すぎてこれは問題ではないかと指摘する。最初にソフトウェアで分析を行い、問題点を分析会社が農業経営者のスマートフォンやタブレットに情報を送信してくる仕組みである。
「データの信ぴょう性を精査し、分析会社の判断を確認しなければならないが、この作業にかなり時間がかかり、負担も大きい。私の介入なしで毎日もしくは1日おきに、農地の評価と状態を識別し、窒素、雑草、病気に関するデータを分析解析して送信してもらえればドローンは本当に価値ある技術であろう。」と述べている。
AgTechインサイト社のハント氏は自動追跡とGPS機能付きフライトをイメージしている。自動スキャンと画像認識技術の開発にかかっており、以前はスノーボーダーの追跡に使われた技術である。この技術があれば、手動で昔の農学者やソフトウェアプラットフォームで画像処理する必要がなくなり、シャイド氏が指摘する「特定場所のチェック」も可能である。「害虫の発生、灌漑漏れ、または想定外のコストがかかる事故への迅速な対応は素晴らしい成果で価値があると言える。現在は生産者にとって時間制約があり、問題解決に根気のいる作業であろう。」とハント氏は述べた。
有意義であるデータの識別およびアルゴリズムにそれらを取り込む技術革新が農業用ソフトウェア企業にとっての大きな課題であると、ハント氏は論じている。
業界の規制もまたドローンは視程内で飛行させると制限が付いており、監視なしドローン探査というウィリアムソン氏の計画を阻止するものである。今のところ、ドローンは衛星と航空機で構成される画像技術での単なる補いであるにすぎない、とデジタルハーベスト社のキム氏は論じた。彼は今様々なデータ収集ツールを使って農業経営者の特定問題の解決を図っている。
衛星は低解像度で農作地に関する大規模データを収集することができ、飛行機はより正確なデータを収集し、Terravion社のように問題の場所を素早く見つけハイライト表示することが可能である。ドローンは農業経営者が問題の場所へ連れていくことが必要ではあるが、さらなる詳細情報を見つけることが可能である。「ドローンはおそらく今日における貴重な存在であるが、特定の場所に関する情報にのみ強みを発揮する。」農業データ新規事業であるFood Origin社の創業者であり、Reiter Affiliated Companies社のベリー生産で革新的社長であるネイサン・ドーン氏は述べている。
「ドローンはカメラや散布材といったほかの技術を運搬する媒体としても大いに価値があることを忘れてはならない。誇大広告は技術であり、ドローンではない。前もって言っておくが、私はドローン反対者ではない。ただカメラと同じような価値が見いだせないと言わざるを得ない。撮影された画像がすべてだ。どのくらいの解像度と範囲をカバーできるかにかかっている。
衛星は毎日地球全体をカバーする。ドローンは一部のみだ。私自身が現場に行かなければならないし、撮影後の仕事もしなくてはならない。確かに詳細な情報は得られるが、その分私の仕事の負担が大きい。もし、1500ポンドの農薬散布材を運搬できるドローンがあれば興味があるが。」とドーン氏は論じた。
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