AgTechが2015年に撒いた新たなソリューションの種
Editors Note: This article was originally published on AgFunderNews, the online publication of AgFunder an investment platform for food and agriculture technology.
2015年、農業界の技術に大きな進展が見られた。
世界各地で見られる干ばつ状況下でも農業を行うこと、および数十年後には23億人増加する世界の食糧供給を支えること、この二つの危急の課題に対応するため、テクノロジー分野の起業家や農業従事者はそれぞれにAgTech( 農業関連のテクノロジー)ツールを開発してきた。
その成長を測る物差しとして、AgTechに対する投資額が挙げられる。AgFunderの発表によれば、2015年の投資額は40億ドルと推定され、2014年の23.6億ドルと比べて1年で倍増に近い成長を見せた。さらに、気候変動による水や耕地の将来的な不足を懸念し、大手食品企業は農業サプライチェーンへの精密農法(precision farming)導入に多額の研究開発費を投入した。
ケロッグ社をはじめとした大手食品企業は、農業サプライチェーン内で精密農法を実用化するための投資を行い、生産性向上だけでなく国連が支持する気候変動対応型農業(climate-smart agriculture)の実現を目指す。気候変動対応型農法とは、より少ない水量で農業を行い、グリーンハウス・ガスの排出を減らす効果のある持続可能な農法である。シンジェンタ社(Syngenta)が開発したインテリジェント灌漑プラットフォーム(intelligent water irrigation platform)により、農家はデータに基づいて農地の水分量を判断し、放水のタイミングを正確に管理できるようになった。またモンサント社(Monsanto)はバイオテック企業ノボザイムズ社(Novozymes)と協働し、植物の健康のための微生物ソリューションを開発している。テクノロジーと農業の融合による最大のインパクトは、クラウドベース・ソフトウェアとサービスの急拡大に見られる。
都市部の農業パイオニアは地元農産物を都市に供給することに意欲的であり、垂直農業(vertical agriculture)やコンテナ農法(freight car farming)など新発想の農法を編み出した。AeroFarms社は、ミスト状の水分とLEDライトの環境で土を使わずに野菜を育てるエアロポニックス(aeroponics)という装置を用い、都市部に9か所の農場を開設した。同農場ではデータアルゴリズムを駆使し、栄養分と水分の正確な管理が行われている。
農業分野に対するテクノロジー業界の関心、AgTechに対する投資家の関心を受け、インキュベーターやアクセラレーターらはAgTech、協働活動体(collaborative entities)、技術プラットフォームなどの分野のさらなる成長を積極的に売り込んでいる。ファーマー・ビジネス・ネットワーク(The Farmer Business Network)はそのような協働プラットフォームの一例である。同プラットフォームは元グーグル社員により設立され、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(Kleiner Perkins Caufield & Byers)、DBLインベスターズ(DBL Investors)、グーグル・ベンチャーズ(Google Ventures)などを含む大手ベンチャーキャピタルから資金を受け、AgTech企業に対して農業分野のデータソリューション・プラットフォームを提供している。
農業界の上に浮かぶ雲―クラウドサービス
テクノロジーと農業の融合による最大のインパクトは、クラウドベース・ソフトウェアおよびサービスの急拡大に見られる。あらゆるタイプのデータ収集が可能なセンサー、膨大なデータの蓄積が可能なクラウド・ベース・ストレージ、およびデータ解析に基づきアクション提案をする分析ソフトウェアの併用により、多くの業界に破壊的な革新がもたらされた。農業は最近その恩恵を受け始めた分野である。
「ビッグデータ分析が農業にもたらす潜在的恩恵の大きさが認識され、様々な農業関連のビッグデータ・テクノロジーが出現し、農家やそのサービス・プロバイダーに提供された」とアグファンダー(AgFunder)のコントリビューターで法律の教授でもあるローレン・マニング氏は言う。
「ビッグデータは精密農業の発展において重要な役割を果たしており、それにより農家やアグリビジネスは持てる資源を可能な限り効果的に使用し、最大限の収穫を得ている」
先進国の水不足に悩まされる農家において急速に広まったのが、シンジェンタ社などが提供する土壌や湿度のセンサー、トゥールス・テクノロジーズ社(Tules Technologies)開発の葉水面蒸発量センサーなどの植物の養分摂取量観察センサー、およびローカルな天候パターンを読み取るセンサーなどである。小規模農家が多数を占める発展途上国においてさえも、クラウド・ベース・データ・サービスが導入されつつあり、気候変動への適応の一助となっている。
ドローンやセンサー搭載トラクター、コンバインや灌漑コントロール・ステーションに設置されたコンピューター制御ボードなどは、米国においては農業に欠かせない要素となっている。ドローンの空撮画像を基に、農家は肥料散布量の計算や灌漑計画から害虫・病気の管理に至るまで様々な判断を行う。灌漑分野では、西部の多くの畑において従来のスプリンクラー方式に代わり、精密にスケジュールされた点滴灌漑が根の近くや地中で行われている。個々の畑や植物に応じて水やりのタイミングを判断する、データ・リンク点滴灌漑システムも多数開発されている。
ブルー・リバー・テクノロジー社(Blue River Technology)は、外見はトラクターだが高度なデータ・インテリジェンスを搭載した農業ロボットを開発した。これによりどのレタスを収穫し、どのレタスをさらなる成長のために残すかの自動判断が可能となった。
30年後には90億人となる人口を支えるために生産量を70%増やさなくてはならないという難題に、これらのテクノロジー・プラットフォームやデータ関連製品が応えられるのか、判断は難しい。生産性向上の必要性が高まっているのに、開発や海面上昇、気温上昇により耕地面積は徐々に縮小しているのである。
米農務省は農業信用制度(Farm Credit System)や農業ビジネス投資プログラム(Rural Business Investment Program)を整備しており、2014年から2015年にかけて試験段階を終え商業化された農業用水ソリューションの主要資金提供団体のひとつである。また国連は、気候変動対応型農業推進という形でAgTechを積極的に支持している。
Link:http://www.greenbiz.com/article/aerofarms-syngenta-ag-tech-sowed-new-solutions-2015