NEC、カゴメと協業し農業ICTソリューションの実証実験を実施
今月11日NECは、ICTの活用により農作物の収穫量増加や栽培効率化などを実現する農業ICTソリューションのグローバル展開を強化するとし、今後グローバルに展開する食品製造・加工会社などと共同で実証実験に取り組んでいくと発表した。その第一弾として、カゴメと協業し、カゴメの現地子会社のあるポルトガルのトマト圃場でICTソリューションを活用した実証実験を行った。この結果、圃場間で収穫量の差が生じる原因の分析や圃場ごとの最適な栽培方法の導出が可能、また収穫量や収穫適期を正確に予測可能などの成果が得られたとの事だ。
NECが開発したICTソリューションは、圃場に設置した気象・土壌などの各種センサや人工衛星、ドローンなどから得られるデータと、灌漑・施肥などの営農環境から得られるデータをもとにコンピューター上に仮想圃場を生成し、この仮想圃場での生育シミュレーションからその土地に応じた最適な営農アドバイスや収穫量。収穫適期などの予測を行う。
仮想圃場上での多様なシミュレーションにより、作物の生育状況や気象条件に応じた水・肥料・農薬などの使用量の最適化および収穫量の最大化するほか、収穫量・収穫適期の予測を踏まえた集荷作業の効率化、定植時期のコントロールによる加工工場の稼働率の平準化など、食・農におけるバリューチェーン全体の最適化が図れるとしている。
元来経験に頼ることの多い農業の現場だが、NEC独自のビッグデータ分析技術を用いることで、長期間のデータ蓄積を前提とせず、作物の生育レベルと環境条件を踏まえた科学的なモデリングを実現している。
実証実験は2015年3月から開始し、夏期シーズンを通じて行われた。同圃場に設置した気象・土壌などの各種センサや人工衛星・ドローンなどから得られるデータと、灌漑・施肥などの営農環境から得られるデータを活用し、トマトの生育状況や気象条件に応じた水・肥料・農薬などの使用量の最適化と収穫量の最大化を検証した。この結果、以下の成果を確認できたという。
・ 畑における水分・窒素ストレスを空間的に見える化し、圃場間で収穫量の差が生じる原因を分析
・ 畑ごとの最適な栽培方法の導出が可能である
・ 収穫の1か月前からでも、収穫量や収穫適期を正確に予測できる
試験圃場でのトマトの1ヘクタール当たりの単収は146トンとなり、これはポルトガル平均の1.5倍に上る。カゴメはこの成果について、NECのビッグデータ分析技術を活用した解析にて、こうした高い収穫量がなぜ実現できたのか、その原因を明らかにすることができたと述べている。またこの技術のさらなる検証を2015年10月からオーストラリアでも開始しているとの事だ。
NEC側は、「NECが有する分析・予測・制御・解析の各種技術を活用し、農資材から生産・加工・流通までの食・農バリューチェーンの各事業者に対して価値を提供することで、世界規模で急増する食糧需要を満たす生産改革と公正な分配の実現、およびあらゆる場所での安全・安心な食環境の実現に貢献します。」とコメント。
一方カゴメ側は、「社会の変化を予測し、その時代の要請を事業戦略に組み込み、カゴメならではの方法で、社会課題の解決に貢献(ソリューション)します。また、この貢献を通じて、経済価値を創出する力(イノベーション)を高めていきます。」とコメントしている。