マレーシアの大学、パーム油廃棄物からの高タンパク質動物飼料の製造に成功
インドネシアと並んで世界的なパーム油の生産地であるマレーシア。そんなマレーシアの大学が、パーム油の原料であるアブラヤシの廃棄物と微生物から、高タンパク質の動物飼料を製造する手法を完成させ、課題となっていたパーム油製造の副産物であるアブラヤシ廃棄物の有効利用方法となりうると現地メディアが伝えた。
この地域の農家は一般的に、米ぬかのような農業廃棄物を動物飼料として使用している。しかし、このような作物残渣はタンパク質や、ビタミン、その他の栄養素が欠乏していることが問題であった。マレーシアプルリス大学(UniMAP)の科学者たちはアスペルギスル・テレウスという菌を使った発酵処理により作物残渣から高タンパク質動物飼料の生産に成功した。この発酵には圧搾ヤシ繊維とパーム油の抽出残渣の二つのタイプの粉砕残渣を使っている。
研究チームは、このアプローチは従来の低コスト飼料への栄養成分の微量添加の方法よりも安価であるとし、有り余るパーム油製造に伴う廃棄物を有効利用できるかもしれないとしている。
「我々は、パーム油の農工産業から出る豊富な廃棄物に研究の焦点を当てる選択をした。」とUniMAPバイオテクノロジー研究者のZarina Zakaria氏は言う。
パーム油製造における副産物の発酵は32℃の環境下で、7日間に渡る。1L当たりの圧搾ヤシ繊維と抽出残渣から得られるタンパク質含量は、それぞれ159mgから401mg、146mgから493 mgに増加する。
「我々の研究はまだまだ駆け出しですが、さらなる研究により、他の農工産業廃棄物に対しても適切な微生物の株を用いることで応用が可能です。」とZakaria氏は続けた。
研究雑誌(Pertanika Journal of Tropical Agricultural Science)に2月に報告されているが、これまでの研究はココナッツかすや廃棄オレンジ、米ぬか、バナナの皮などの新たな発酵原料の可能性を探すことに焦点を当てていた。
「近年、国際連合食糧農業機関(FAO)は家畜飼料として農工業副産物を利用すること重要性を強調してきた。例えば、麦わら由来の高密度飼料ブロックの製造などがある。」とFAOの飼料専門家であるHarinder Makker氏は言う。
「しかしながら、ラージスケールでの発酵技術を用いた動物飼料生産を有益なものにするにはまだまだハードルがあり、 農工産業副産物を用いたシングルセルプロテイン(微生物タンパク質)の発酵生産は適切なインフラと技術的専門知識が必要である。工業的には実現可能であるものの、小規模農家がダイレクトにアクセスできるほど手軽な技術ではまだない。」とMakkar氏は続けた。
参考:http://www.scidev.net/asia-pacific/r-d/news/fungus-fermentation-palm-waste-fodder-1.html