持続可能な栽培に向けて、パーム油産業の抱える大きな問題点とは
パーム油産業が環境的そして社会的責任のある産業となるのなら、ビッグビジネスが小自作農が持続可能な栽培をするように支援せねばならないと、年に一度のRoundtable on Sustainable Palm Oil (RSPO)のカンファレンスでは議論になった。
小自作農に対して、彼らの農業活動の改善やRSPOの持続可能パーム油認定を得るために必要なトレーニング、リソース、そして管理に関する支援を提供することで、企業は環境への影響を小さくすることができ、そして農家の生活も改善される。
クアラルンプールで行われたそのカンファレンスで、インドネシアのパーム油製造大手Asian Agri社のKelvin Tio氏は「小自作農はこの産業においてなくてはならない存在だ。そして彼らのアブラヤシ収穫量や収入はかなり改善の余地がある。」と述べた。
RSPOとその関連企業はすでに小自作農のサポートに着手している。しかしパーム油産業は持続可能なグローバルサプライチェーンへ農家を集約させるためにもっと多くのことができるのではないかとの意見も挙がっていた。
持続可能なパーム油のエコシステムを築き上げている小自作農はほんのわずかに過ぎない。300万人いると言われる小自作農のうち、約4.6%しか持続可能な栽培の認定を得ていないのだ。残りはその認定を得ようとしている農家、そして焼畑を行い農地を広げるといった従来の持続可能でない農業を続けいている農家たちだ。
小自作農のジレンマ
小自作農とは50ヘクタール以下の農地を所有し、家族単位で運営を行っている農家のことだ。基本的に農業で生計を立てている。通常、小自作農は商業的なプランテーションよりも栽培効率は悪い。
例えば、アジアでアグリビジネスを展開するWilmar International社は、十分に熟したアブラヤシが1ヘクタール当たり18-30トンは収穫できると述べている。一方でマレーシアの独立農家は1ヘクタール当たり17トンほどの収穫量だ。
小自作農のアブラヤシ栽培は商業用プランテーションに比べて非効率なだけでなく、持続可能性が低いのだ。
森林や泥炭地の火災が原因で大気汚染が地域を横断してしまっている、東南アジアの最近のヘイズの問題が深刻化する中、企業やアナリストたちは小自作農の焼畑を批判している。こういった農家には機械や化学物質を使って開墾する金銭的余裕がないのである。ゆえに、1ヘクタールあたり5ドルで開墾できる焼畑を選択するのだ。(ヘイズの問題に関する記事はこちら)
大企業は小自作農がより持続的で効率的な栽培を採用するよう、さまざまな手段を講じて支援しようとしている。
パーム油の製造工場を保有する多くの企業は、小自作農と連携するネットワークを構築したり、独占的にパーム油を販売する代わりに効率的な栽培を行うためのリソースやトレーニングを提供したりしている。インドネシアではこのプロセスは”plasma”と呼ばれていて、企業は管理する小自作農のために一部譲歩する必要がある。
RSPOとその提携企業はまた、小自作農が持続可能パーム油の認定を得るために、申請や審査の費用をまかなうことで援助する。企業は小自作農の収穫量の改善や学校、病院などのソーシャルサービスの提供でもこのプロジェクトをサポートする。RSPOは小自作農をサポートするファンドが2012年に設立され、先に述べた目的を果たすべく援助を行う。RSPOの認定は農家が追加の収入を得られるようになるだけでなく、収穫量の向上や経済的連携においてメリットがあるということだ。
ネットワークの中にいる小自作農は完全に独立した小自作農より収穫量が高いという。作業の効率化により収穫量を増やすことで、農家が新たな土地を切り開く必要がなくなるのだ。
小自作農が抱える障害
RSPOの認定に価値があるにもかかわらず、小自作農らはまだまだ直面する課題が山ほどある。まず、その認定の仕組みや基準に関する知識が欠けている。
持続可能なサプライチェーンの国際機関のひとつ、Solidaridad West Africaでマネージャーを務めるRosemary Addico氏は、「すべての小自作農が認定の要件のリストを読むことはおろか、読み書きができるわけではない。」と話す。
これに関して、認定申請システムや技術情報の提出をすべてオンラインにすることに関してRSPOは断念しかけている。Addico氏は小自作農に対し認定基準を下げることをする必要はないが、より理解しやすくしたり、アクセシブルにしたりして認定要件を完全に満たせるようにしなければならないと話す。
RSPOはまた経営管理の補助を提供したり、ファンドは認定を得るためのコストに対する先行投資で農家を支援する。認定を得るためにベストな方法をシェアする、小自作農のプラットフォームも作った。
例えばすでに認定を得たタイの農家は、RSPOの基準を満たすために何をしたか説明ができるし、ガーナの認定農家は認定を得ようとしている農家をモニタリングすることでフォローアップすることができる。経験のシェアは、持続可能な農業のスケールアップには有効な手段である。
上記のような知識の障害だけでなく、金銭的な誘因も認定を得るには不十分だ。
マレーシアのパーム油企業、Felda Global Venture HoldingsのチーフエグゼクティヴオフィサーであるAbdllah氏は、「小自作農がより持続的な栽培を行えるよう援助する必要があるが、その立証やモニタリングを認定要件に加えたところで消費者はプレミアムを支払うのだろうか?」と疑問を感じている。
カンファレンスに参加していた他の産業の参加者は、12.1百万トンのパーム油が現在RSPOの認定を受けているが、トレードマークをつけて販売されているのはその半分だけで、あとは認定を受けていないものと同じように販売されていると指摘した。現状では、小自作農が認定を受けるために投資をしたり努力をしたりすることは、ビジネスとして報われていない。
小自作農がさらに持続的な栽培をするよう圧力をかけられている一方で、生産者からパーム油を買い上げる企業は認定をつけてプレミアムの価格で販売せねばならないとの声がカンファレンスでは挙がった。
パーム油のマーケットを持続的かつトレーサビリティーなものにしていく一つの取り組み、Sabah small producers(SPOTS)がフランスのコスメティク会社であるロレアル社がパーム油のWilmar社、化学製品メーカーClariant社、そしてconservation social enterpriseのWild Asia社とパートナーを組んで始まった。
SPOTSはマレーシアのSabah地域の500の小自作農が2020年までにRSPOの認定を得ることを目的としている。この小自作農は収穫物をWilmar社に販売し、最終的にロレアル社が森林破壊をゼロにするポリシーを満たす原料を使うことになる。
ロレアル社の担当者Provost氏は、このプロジェクトはロレアルが持続的なパーム油へのアクセスが増しただけでなく、消費者の小自作農が抱える問題への意識が高まることにも寄与していると話している。
しかし結局は、認定は単に農地で持続的な栽培が行われていることを他者に保障するだけだということを覚えておかねばならない。認定制度にはもっとフォーカスする必要がある。今後はさらに小自作農を活気づけ、教育を行っていく必要がある。それにはやはり今後もコストが掛かりそうだ。
参考:http://www.eco-business.com/news/palm-oils-big-issue-smallholders/