三井物産がミャンマーの肥料事業に出資:同国農業のポテンシャルとは?
三井物産株式会社は、東南アジアの化学品販売大手のベン・メイヤー(BM)と共同で、シンガポールに投資会社BMMベンチャーを設立することで合意し、3月10日に契約を締結したと発表した。三井物産はBMMベンチャー株式の49%を取得する予定だという。
また同時に三井物産とBM両社は、BMMベンチャーを通じて、ミャンマーに肥料の製造・販売及び輸入肥料販売を行う新会社を設立することで現地パートナーのミャンマー・アグリビジネス・パブリック(MAPCO)と合意に至った。MAPCOは2012年に設立された民間企業で、現地ミャンマーにて農業関連事業を手掛けており、国内農業の中核的存在となりつつあるという。
新会社では、ヤンゴン周辺に年間10万トン規模の粒状配合肥料の製造設備を建設予定で、2017年5月の操業開始を目指す。新会社への三井物産の出資額は5億円程度になる見通しだ。BMが有する粒状配合肥料の製造・販売に関する知見と経験、MAPCOの国内農業従事者とのネットワーク、さらに肥料の原料開発、物流、販売事業に長年取り組んで来た三井物産のファイナンス・物流・調達・マーケティング機能を融合し、ミャンマーの農業の発展に貢献していくと発表している。
また今年の1月には、丸紅もミャンマーにおける肥料加工及び輸入肥料の小分け販売を開始し、工場を2017年4月に操業開始する予定だと発表している。
ミャンマー農業のポテンシャル
ミャンマーの農用地面積は日本の約2.8倍の1,259万ヘクタールに及ぶ。ミャンマー国内GDPの38.2%(2011年)が農業で、ミャンマー経済にとって農業は非常に重要な位置付けとなっている。
ミャンマーの農業環境の特徴として、農薬や肥料をあまり使わず、生産性が低いことが挙げられる。2000年以降国からの補助金が減額されたことで、肥料価格が大幅に高騰したためだ。またこれに加えて資金不足、そして知識不足の農家が非常に多いことも、生産性を下げる要因となっている。
1920年代、イギリスに植民地支配されていたミャンマーは年間300万トン以上のコメを輸出し、当時は世界最大のコメ輸出国とも言われた。しかし社会主義時代の自給自足方針に基づくコメの生産、流通の国営化によって生産量、輸出量は低迷した。
現在は政府がコメ増産及び輸出強化を進めているため、生産量が増加傾向だ。こうした動きや、かつてのコメ生産のポテンシャル、そして今回のような外資による投資によって、ミャンマーの農業国家としての成長は加速しそうだ。
三井物産は今回の投資会社設立を機に、今後ミャンマーをはじめとする東南アジアにおける肥料・農業資材関連ビジネスへの取り組みを強化していくとしている。