• このエントリーをはてなブックマークに追加

日米交流: 日本の室内農業からアメリカが学ぶことは

Pocket はてブ

Editors Note: This article was originally published on AgFunderNews, the online publication of AgFunder an investment platform for food and agriculture technology.

今日の室内農業市場においては葉物野菜などに焦点を当てる人々が多い。それは規模を広げる為に、室内農業の市場性と比較的高値の地産品が産業を動かしているからである。

 筆者Pieter De Smedt氏は、Urban Crops 社のアメリカマネージャーである。この記事は室内農業界では欧米と比べ先進的な日本から、筆者がイベント時に学び取った“鍵”を記している。


2016年12月、カリフォルニア州・サリナスでAgtechにおける相互協力と農業環境のコントロールについてのイベントが行われた。このイベントでは、多くの日本人とアメリカを拠点にした会社や組織による本質をついたプレゼンテーションが行われた。主な目標は、互いの現況報告とそれぞれの地における室内農業産業の将来的方向性の共有であった。均等な洞察力を持つことは互いのセッションにおいて異なるネットワーキングの有利な条件である。その産業に関わる地球の裏側の人々と意見交換する、そんなセッションの機会が持てるのも毎日できたことではないが。

 

以下が、このイベントの4つのキーポイントである。

1,データは夢に勝る

イベントの全容と日本の法人・組織によるプレゼンテーションを振り返ると、日本とアメリカの室内農業の工程における最も重要な違いはデータの利用についてだとわかる。日本の室内農業従事者は一般的にアメリカの室内農業従事者が非現実的で正直に言って夢か物語かのようなデータを用いるのに比べ、より多くのデータを用いている。

このデータへの着目は各植物工場がそれぞれに行なっているもので、植物工場における技術的、生物学的、また経済的効率性をビッグデータと関連する数字の高速処理によって分析している。これまでの進歩は、この分析の結果としてでた決定を通して達成されたのだ。結果として利益増加を実現したSAIBAIXというクラウドベースプログラム(PlantX社の統合環境制御システム)が良い例である。イベントでは、“LED Lighting for Urban Agriculture”(都市農業のためのLED)の著者であり植物工場の父として知られる千葉大学の古在豊樹教授もまた成功例として挙げられた。

日本の植物工場のパフォーマンスにおけるデータは盛り上がりに欠ける。室内植物工場の42%は赤字、33%は損益なし、利益が出ているのはたった25%というのだ。このハッとさせられるデータの理由は、過度の資本支出と事業費、効率の悪い生産工程、他との取引の中で充分なマージンを取りそこねている詰めの甘いビジネスプランなどである。

私達は似たようなデータとアメリカ市場で同様に出てくるであろう根本要因を推測することができる。これは資本の集まる革新的産業の典型である。中長期的な視点で見ると、生き残る卸売業者や生産者とは、効率的なセールスプランに付随する正しい生産工程に結びつけた適切な構造を自ら構築できる人々であろう。彼らの要求を見定めて必要な投資額と事業費の明確な見通しを示しながら、最善と費用対効果のマッチしたシステムの検討を伝えるというだけの働きを持って我々がクライアントを支援しているUrbanCrops社(ベルギーの植物工場)においても、この事は実現しつつある。

 

2.自動化の担う役割は増えていく

808FACTORY(垂直農業に取り組む日本の会社)によるデータは労働コストが事業費の3分の1を占めていると実証している。間接的に従業員に関わるコスト、例えば研修や消毒室、食品の安全に関する問題、また不動産に必要なものなどを考慮すると、トータルコストはより高くなる。これは、より大きいスケールの生産施設のために植物工場のロボット化に投資する事で様々な利益があるというUrbanCrops社の主張を裏付けている。

 

3.大規模露地農業ビジネスが頭角を表している

その発展へのクローズアップが続いてきていることは確信しているが、比例してとても多い露地栽培の会社が室内農業にのみフォーカスしたイベントに参加したのは初めてのことであった。参加したのは、Rocket Farms社、Del Cabo社、Church Brothers社などである。一方で、これはイベントが開かれた場所が“サラダボウル”の中心、カリフォルニア州サリナスであったという地理的要因があったからだとも説明できる。それでもなお、これらの会社は、彼らの生産方法とおそらくもっと大切であろうロケーションの多様性に関心を寄せていることをほのめかしているようだ。カリフォルニアを拠点にした農業従事者達が、より大きなマーケットの近くで室内栽培設備を用意しだすのを見ることができるかもしれない。

 

4.食料品を越えて見る

今日の室内農業市場においては葉物野菜などに焦点を当てる人々が多い。それは規模を広げる為に、室内農業の市場性と比較的高値の地産品が産業を動かしているからである。

産業の初期段階を考えることは価値のあることかもしれない。ドン・ウィルカーソン博士はそこには1ポンドの作物あたり他に高い価値があると思い起こさせる。彼の会社iBio CMOは栄養補給した作物の栽培を行っている。都市の地産品に比べると少々熱に欠けるが、持続可能性にも経済状態にも等しく影響を及ぼし、よりいっそうとまではいかなくとも印象的なものではある。

私達はそれに消費者と同様に気づいた。UrbanCrops社は160種の植物に対して栽培方法を知っている。私達は、新種の栽培のために、市場の評価と消費者の要望をベースにこの栽培方法の種類を増やし続ける。つまり、工学と生物学的適応性が鍵なのだ。

AgTechにおける相互協力と農業環境のコントロールについてのイベントは、私達が国境を越え、世界中全ての地域における発展にも出会い続けるべきだという事を実証した。グローバル産業は、国際理解を必要とするのだ。

 

Link:https://agfundernews.com/lessons-from-japan-what-the-western-indoor-ag-industry-can-learn-from-the-east.html

AgFunder-news-white_200px1

 

Pocket はてブ