Blue Apronの上場は、ミールキットの業界地図を塗り替えるか?
ミール・キット(レシピと食材の宅配キット)会社のBlue Apronがニューヨーク証券取引(APRN)で1億ドルの株式公開を開始しようとしているいうニュースが飛び込んできたとき、各メディアにはこのスタートアップが直面する課題を強調するような見出しが躍った。どのニュースも、高コストの顧客獲得と、5年前できたばかりのフードテック会社の損失が増加し、見通しが不安定になりつつあることに触れていた。
ニューヨークに本拠を置く同社は、食材の数に応じて、週の初めに予め分けられた食材とレシピを消費者に直接発送するサービスを展開する。注文の数にもよるが、ボックスひとつにつき値段は60ドルほど。この方法は今や一般的なモデルであり、シェアをめぐっての15以上のライバル会社間での激しい競争が起こった結果、巨大で高コストなマーケティング合戦が行われている。
財務諸表を読み解くと……
高い顧客獲得コストの問題は、既存の顧客からの受注が時間の経過とともに徐々に減少していくことで説明される。Blue Apronは今年第1四半期の売上高を42%増やして4億2,500万ドルとした。しかし、概して食料品産業は、また、ミールキット宅配ビジネスはさらに季節性であり、夏期には注文が減少し、この第1四半期がブBlue Apronの最高売上となる可能性がある。
2016年の総収入は前年比133%増だったものの、Blue Apronは依然として損失を出している。同社は2014年の30.8百万ドルを上回る、54.9百万ドルの純損失を計上した。第1四半期の純損失は52.2百万ドルで、マーケティング費用の増加によるものと思われる。
一方で、粗利は2015年の23%から2016年の33%へと概ね改善された。ただし、繁忙期である2017年の第1四半期のマーケティング費用が全体に影響して、31%に減少している。
このように、財務は複合的なものだが、とりあえずは順調なIPOで、この有名な消費者ブランドは顧客に頼った発行株式の強化ができるだろう。
興味深いことに、Blue Apronの直接競合企業のうちの2社も、部分的な株式の公開を始めている。ベルリンに本拠を置くHelloFreshは、昨年のフランクフルト取引所上場に向けて動き出したが、8850万ドルのシリーズGを調達した後、昨年末に20%(20億2千万ユーロ)の評価を引き下げたため、一時的に待機状態に入ったようだ。
サンフランシスコに本拠を置くSun Basketも今年初めに銀行家を雇用し、2月にシリーズCの1500万ドルの募金を受けて3億ドルで評価され、資金調達の総額は5530万ドルに達した。
先んじるメリットはどこにある?
アナリストらは、この動きは他社に先駆けたいという欲望以上に、ブルー・エプロン自身の財務的な特質と関係している可能性が高いとしている。
「『株式公開された最初のミールキット会社』になる以上に彼らを突き動かしている要因は、投資家達が流動性を求めていることです。つまり、近頃は市場が揺れ動いているため、現在のようにIPOの余地があれば、彼らはすぐに動く必要があるのです。さらに、彼らはビジネスの指標と成長ストーリーが一般の人々の監視に耐える事が出来るほど強力だと考えています」と、カリフォルニア州の食品・アグテックアドバイザリーグループThe Mixing BowlのパートナーであるBrita Rosenheim氏は語っている。
さらに、AgFunderのRob Leclercによれば、最近20億ドルの時価総額をつけた事を考えると、株式公開を行っても、そこに潜在的な買収者はほとんどないという。 「Blue Apronの収入を考えれば、買収はほとんどの古臭い小売業者にとっては余りにも高価である可能性が高い。これだけのお金を払える人はあまりいないため、買収のおそれはまだなく、Blue Apronはプレッシャーを感じることはない」
競合他社にとって、上場は吉と出るか凶と出るか?
オランダ&ハートの法律家および「取引アドバイザー」のChuck Cotter氏によれば、Blue Apronも競合も、IPOがうまくいくならば多くの利益を得るが、うまくいかなければ大きく企業価値を落とす事になる。オープンで堅牢で継続的な成果が出れば、Blue Apronの競合だけでなく、ミールキットや直接消費者へのデリバリーを検討している一般的な食料雑貨店の他のプレイヤーにとっても、緑信号として役立つだろう。 反対に不満足な企業価値になってしまったら、それは競合他社の潜在的なIPOや、彼らが期待していた評価で資金調達することに悪影響を及ぼすと思われる。
RosenheimとCotterは、Blue Apronは買収を増やすために流動性を得ようしている可能性もあると述べている。Blue Apronは今年の初め、カリフォルニア州とニュージーランドで有名な牧場経営者ビル・ニーマン(Bill Niman)がスタートした再生牛飼育会社BN Ranchを買収した。加えて、ブルー・エプロンのS-1提出書類によれば、IPOの目的の1つが債務の返済であることである。
このように、買収可能性の低さ、債務支払いの可能性、おそらくは買収の増加を考えると、最初のミールキット企業の上場は、大胆なギャンブルよりも必然的だと言えるかもしれない。
LINK: https://agfundernews.com/build-artificial-intelligence-indoor-farm.html