キャッサバゲノムの解読:知られざるキャッサバの特性とは
キャッサバゲノム配列を初めて解読したとの研究結果がケニアの研究機関から報告された。これによりキャッサバの遺伝的な基礎や病害抵抗性、品質、作物生育特性への理解がさらに深まることが期待される。この研究は、キャッサバのゲノム資源の拡充を大きな目的としている。
研究はキャッサバゲノム配列の質(正確性)を向上し、解析されたゲノムデータによりキャッサバゲノム全体の97%もの遺伝子が推定された。さらに、膨大なDNA情報はキャッサバの起源や品種改良へのきっかけを見出してくれるのだという。
このゲノム解読はアフリカのキャッサバの品種多様性に注目しており、特にアフリカの広い地域で壊滅的な被害を与えているキャッサバのウィルス病への抵抗性に着目している。
知られざるキャッサバの特性
キャッサバは日本でポピュラーなタピオカの原料だ。実はキャッサバは栄養素に乏しい土壌でも生育でき、水もあまり必要としない。トウモロコシなどの作物が育たない場所でも生育できることから、アフリカの生命線となる作物となっている。世界では8億人がキャッサバを主食としている重要な作物なのだ。
気候に左右されにくい、水をあまり必要としない、栄養素に乏しい土壌でも十分に生育するなどの特性を持つキャッサバは、今後の気候変動の状況で安定して生産できる主食として注目されている。また、非可食部がバイオマスエネルギーの原料となることも、近年注目される理由のひとつだ。
ナイロビ大学のケニア出身の育種家、ポールキマニ氏は、この研究の素晴らしいところはキャッサバのDNA情報を明らかにしたことと、近縁種との遺伝的な関連性を明らかにしたことにあるという。しかし、この研究だけではまだ、経済的に重要な病気抵抗性や品質、栽培特性などに関連した遺伝子を見出すには至っていない。
キマニ氏によると、これまではキャッサバの育種家が非常に限られた遺伝情報に頼っていたために、病気などが容易に流行り、一度病気が蔓延すれば収穫に大ダメージを負う状況にあった。 キャッサバの栽培を実施する上で重要なのは、野生種であるキャッサバが栽培品種に適応可能な、病害抵抗性、生産性などに関連する遺伝子を持っているのかどうかである。