将来有望なインドのAgtechスタートアップ4選
アメリカの調査会社CBインサイツは今年、将来有望な世界中の注目Agtechスタートアップを77社リスト化した。その多くはアメリカのスタートアップが占めるが、アジア勢からは9社入っており、日本からはFarmnoteがリストに入った。こうしたアジア勢の奮闘の中で最も選ばれた企業が多かった国がインドだ(インド4社、イスラエル3社、日本1社、ベトナム1社)。
インドはテクノロジー、特にコンピューターサイエンスの分野では非常に優秀な人材が多い。一方で国全体の食料安全保障は疑問視され、今後増え続ける食料需要にどのように対応していくのかという点は、国全体の大きな課題であると言える。こうした背景から、インドがAgtechスタートアップが多く立ち上がるのは想像に難くない。テクノロジーは今後人口が爆発していく世界で必要であるとの認識がここ2,3年で急速に広がり、スタートアップに投資する投資家やベンチャーキャピタルの関心も高い。
そんなインドからは今回のCBインサイツのリストに4社が選ばれた。今後インドの農業を支えていくかもしれないこの4社を今回は紹介する。
AgroStar
AgroStarは、種子や肥料をはじめとした農業資材や農業機械に関するモバイルプラットフォームを、インドの農家向けに提供をている。いわば農業資材のマーケットプレイスと言える。農家は必要な資材をアプリ、あるいは不在着信を入れることでオーダーする。ダイレクトに農家に資材を届けることで、小売店で購入するものよりも高品質なものをリーズナブルで簡単に購入できる点をアピールしている。
マハラシュトラ州第二の都市プネーにある同社は昨年、IDG VenturesをはじめとしたVCから、400万ドル(約4.5億円)の資金調達を行った。同社によれば、インドの農家はニーズに合った農業資材の購入に非常に苦労しているとのこと。需給が不一致なことやインド国内の流通の問題、まだまだ粗悪な商品が多いこと、さらには主要商品のブラックマーケティングがこの原因だという。
ETtech.comによれば、マーケットプレイス事業を始めた当初は農家からの注文を不在着信で受け付けていたが、今や現地農家の25%以上がスマートフォンユーザーになったこともあり、アプリからの注文を開始した。このようなモバイルの普及がサービスを大きく拡大させた例が途上国には多いのだ。
Cropin Technology Solutions
バンガロールにあるCropin Technology Solutionsは、農家向けのビジネスソリューションの提供をソフトウェアおよびモバイルアプリで行っている。つまり、農業版のERPパッケージだ。アグリビジネスに対してSaaSベースのサービスをインド国内および海外にも展開し、農地の作物の状況をリアルタイムで観測し、それに合わせたソリューションを提供する。
個人の農家や農業法人に対して農場の異常状態を記録・通知するサービスのSMARTFARM、セールスチャネルの最適化を支援するSMARTSALES、サプライチェーンのトレーサビリティー情報を提供するMWAREHOUSEといったサービスを提供している。料金は1エーカー当たり、1ヶ月50インドルピー(約83円)だ。
同社は今年の4月に、デンマークの投資会社Sophia ApSから約200万ドル(約2.27億円)のシリーズAの資金調達を行っている。
Airwood Aerostructures
Airwood Aerostructuresの特許出願中のドローンは、マルチスペクトルカメラを装備し、気象、水の可用性と作物のリアルタイムデータを取り込みながら農場を飛行する。同社はまた、高度な土壌養分のテストおよび測定サービスと農場マネジメントダッシュボードサービスも提供し、統合型の精密農業サービスを提供している。こうしたサービスで、インド国内農業の生産性を3倍まで向上させ、国内農業の革命を起こすことをミッションとして掲げている。
Airwood Aerostructuresは、インドの最高学府・インド工科大学マドラス校のインキュベーションセンター発の2014年に設立されたスタートアップ。現地VCのStartupXseed Venturesからの出資を受けている(金額非公開)。
Stellapps Technologies
StellappsTechnologiesはインド初の酪農IoTカンパニーで、クラウド・モバイル・データアナリティクスを一体化したオートメーションツールを開発しているスタートアップだ。生乳生産アプリケーションのSmartFarmsは、アクティビティーメーターが牛の健康状態をリアルタイムで計測し、クラウドベースで牛群を管理している。また同社ホームページによれば、機能のひとつであるミルクメーターは、モバイルヘルスケア、生産性の監視、プロトコルの順守を目的とした世界初のクラウドベースの携帯用電子式牛乳メーターで、生乳の電気伝導度、収量、温度、搾乳速度をほぼリアルタイムでオンラインおよびインラインで測定が可能なのだという。
こちらもインド工科大学マドラス校からインキュベートしたスタートアップ。インドでAgtechやフード系スタートアップに出資するOmnivore Partnersから出資を受けている(金額不明)。
インドは世界最大の酪農国で、2010年の生乳生産量は1億2000万トンにのぼり、日本のおよそ15倍になるという(農畜産業振興機構調べ)。国内の需要は年々増加しており、供給が追いつかず価格が高騰するのではないかという懸念が広がっているとのこと。2016年のバズワードのひとつとも言えるIoTが、今後のインド国内の生乳生産を支えていくかもしれない。