南カリフォルニア:移民によって維持される遺伝資源多様性
カリフォルニア大学リバーサイド校の科学者たちは、ロサンゼルスとリバーサイドに住む移民農家から集めたトウモロコシのDNA情報を用いて、南カリフォルニアの家庭菜園や市民農園のトウモロコシの遺伝的多様性が、市販のトウモロコシ種子の多様性をはるかに上回っていることを発見したと、サイエンス情報メディアScienceDailyが伝えている。
この研究はあくまでサンプルサイズが小規模で、初期段階の研究であると科学者たちは釘を刺している。将来的にはより多くの菜園にまで研究の幅を広げ、乾燥耐性や、穂軸(トウモロコシの芯)のサイズ、開花時期などのトウモロコシの特徴にもフォーカスするとしている。
これら研究は、作物の品種改良において多岐にわたる遺伝資源を管理することの重要性を示している。新品種の育種、同系統品種の病害や虫害に対する脆弱性の最小化、収量向上、特徴的な品種の掛け合わせなどに対して、遺伝資源を幅広く掛け合わせていくことは有効であるという。
しかしながら、単一品種の栽培を進める国の政策や、離農による農村部から都市部への人の移住などによって、途上国に限らず先進国においても作物の遺伝的多様性は危機的だ。
2008年、研究者たちはトウモロコシのサンプルを、ロサンゼルスとリバーサイドにある家庭菜園や市民農園から集めてきた。彼らはその農園の個体群を、2種類の園芸品目種子、2種類の大規模生産に用いられる工業的な種子、1種類のスーパーマケットで入手可能な量販品種の5つの個体群と遺伝的に照らし合わせた。スーパーマーケットの品種が加えられた理由は、農家が種子を調達するのに現地のみを利用する事があるからだ。
南カリフォルニアは、人と植物の移動の境界研究には極めて理想的な環境である。これは、メキシコやアメリカ中央部からの移住者が、故郷で栽培していた作物を家庭菜園や市民農園で継続して栽培するからだ。
過去の研究では、トウモロコシの遺伝的多様性は 特にメキシコで失われ、そしてその遺伝的多様性の保存維持戦略は、主に2つのカテゴリーに分類される傾向にある。Ex situ とIn situである。Es situは遺伝資源を維持するために、ジーンバンクや植物園などの制御された環境を使用することである。In situは、種の保存や選抜育種のように伝統的な農作業を通じた農家ベースのアプローチである。
南カリフォルニアでは3番目の戦略として、家庭やコミュニティーベースの菜園を描いている。Ex situとIn situを組み合わせることに加えて、人の移住により植物の遺伝的な多様性が保たれるのだ。
参考:https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160413180332.htm