住友商事傘下のファンドが、カナダの農業系スタートアップに出資:今、なぜ生物農薬なのか?
住友商事株式会社(以下、住友商事)の傘下の投資ファンドであるACA Investments(以下、ACA)が、カナダの農業系スタートアップに出資した。
今回出資を受けたTerramera社(以下、Terramera)は、生物農薬の加工・散布技術を開発・提供している。
ACAによる出資の概要と、農業における生物農薬の可能性を調査した。
【目次】
- Terrameraの概要
- ACAからTerrameraへの出資の概要
- 世界の農業における、生物農薬の可能性
| 1. Terrameraの概要
Terrameraはカナダのバンクーバーに本社をおく。
同社が開発する主要な技術は「Insprium」と呼ばれ、生物農薬の加工・散布用途に利用されている。
Inspiriumを利用すると、生物農薬が本来持つ効果を数倍引き出すことができ、また農薬の保管期限も伸ばすことができるという。
生物農薬は従来の化学農薬よりも自然環境にやさしいとされている。消費者の食品に対する健康志向の高まりに合わせて、生物農薬の活用に注目が集まっている。しかし生物農薬は化学農薬と比べて、その効果が安定しない・保管期限が短く購入後すぐに散布する必要があるといった弱みを抱えていることが多い。
そのため、TerrameraのInspiriumは、これまでの生物農薬の弱点を克服する技術として注目を浴びているようだ。
同社はこの技術を事業のコアとしつつ、生物農薬自体も販売しており、農家へ総合的な生物農薬のソリューションを提供している。
| 2. ACAからTerrameraへの出資の詳細
ACAは住友商事などを主要株主とする投資ファンド。
今回のACAへの出資額は$1千万に上る。Agtech系のベンチャーキャピタルであるS2G Venturesなどとの共同出資の形をとった。
TerrameraのCEOであるKarn Manhasは、ACAからの出資に際し、自社のメディアで以下のように述べている。(和訳:筆者)
――Terrameraの事業に対する国際的な関心は以前からありました。今回のACAとの連携によって、我々の対象とする市場や販売パートナーをアジアやそれ以外の地域に拡大できることに大きな期待を寄せています。
また、ACAのディレクターであるJung-Kyu Kim氏は、以下のようなコメントを寄せている。
――ACAがTerrameraへの出資を判断したのは、同社が複数回にわたる圃場試験において、その技術が生物農薬の効果を劇的に向上させることを証明したからです。それだけでなく、同社の生物農薬は、様々な農業分野で利用されている化学農薬よりも優れていることが証明されています。
両氏のコメントを見ると、Terrameraが保有する技術の高い優位性と、ACAがアジア近隣の地域で持つネットワークの相乗効果を期待して、今回の出資に至ったものだと考えられる。
| 3. 世界の農業における、生物農薬の可能性
生物農薬の市場は、2014年時点で$22億にのぼり、2023年には$45億まで拡大すると考えられている。
一方で、化学農薬の市場規模は2014年で$630億で、年率2%後半の成長が予測されている(2023年に$800億強)。
生物農薬の市場規模は化学農薬よりも小さいながらも、その成長率は非常に高いことがわかる。
この傾向は、消費者の食品に対する健康志向の高まりを反映しているといえるだろう。
生物由来の原料から製造される生物農薬は、従来の化学農薬と比べて安全性の高さに期待が寄せられているからだ。
このような背景からもTerrametaの技術は、今後の生物農薬の市場の拡大に大きな影響を生むことが考えられる。
特に、住友商事傘下のACAによる出資で、Trrametaはアジア圏にビジネスを広げることができるかもしれない。
日本を含めたアジアへの、生物農薬の普及が加速する可能性にも注視したい。
参考:
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1053_06.pdf