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農業×国際協力×タイ: 国際開発コンサルタントに聞く!(Part 1)

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SDGs… 読者の皆さんは何のことかイメージがつくだろうか?

「持続可能な開発目標 (SDGs: Sustainable Development Goals)」は、途上国・先進国関係なく”Leave no one behind(誰も置き去りにしない)”世界を目指して、国連とその加盟国が定めた2030年までに達成する17の目標のことを指す。一番に貧困撲滅が宣言されているが、その2つ目には、「持続的な農業を推進、食料の安定確保/栄養状態の改善を達成、飢餓に終止符を打つ」ことが宣言されている。農業が貧困削減のための絶対条件であることは疑いのない事実だ。

その目標達成のために、各国政府や企業含め多種多様な関係者が様々なプロジェクトを実行することになる。そこで必要とされる専門知識を提供するのが今回インタビューさせていただいた「開発コンサルタント」という職種である。開発現場に赴き、調査(データ集めやワークショップを通じた問題解決策の提案)、実施(地域と共同したプロジェクトの実施及びレポート)、評価(分析を通じた問題点の明確化)などの仕事に取り組まれている。

今回は、タイのバンコクにオフィスを構え、タイとその周辺国で開発分野でのコンサルティングサービスと、その経験で培ったやネットワークを活かした研修プログラムや農村滞在・スタディツアープログラムを実施される、IC Net Asia Co., Ltd. の岩城様に話を伺った。タイで開発に携わる背景、農業開発と農村開発の違いおよび重要性、タイの開発の過去・現在・未来になどついてインタビュー形式で多岐に渡って話をいただいた。

Part 1では岩城様のご経歴に加え、農業開発・農村開発、IC Net Asiaでの携われた案件について紹介したい。

IC Net Asia Co., Ltd. 岩城岳央様

生まれは東京、中学から富山に。金沢の大学にて経済学を専攻。民間の電機メーカーに2年間勤務後、イギリスにてRural Developmentの修士号取得。大学院修了後、ネパールを経てタイ東北部の日系NGOプロジェクトに参加。その後IC Net Asiaへ。

 インタビューいただいたIC Net Asia 岩城様


Q: 岩城様ご自身、どのようにタイという国で農業開発・農村開発に従事するにことに行き着いたのですか?どう関心が「タイ」「農業/農村」絞られていったんですか?

大学時代にゼミで飢餓問題について学んだことがきっかけで、発展途上国の開発問題に関心を持ちました。大学卒業後に2年間民間企業で働いた後、イギリスの大学院の修士課程で農村開発を学びました。その後は、まずは現場に出たいという思いが強く、ネパールで日系NGOのプロジェクトに2年半参加しました。タイへの関心はまだありませんでしたね。

ネパールでは眼科医療のプロジェクトに関わりました。インド国境のビルガンジにある現地眼科病院の運営支援やコミュニティーでのモバイルクリニックなどの活動を行い、生活や仕事環境は過酷でしたが、お陰で心身ともに鍛えられたと思います。ネパールでの生活を通じて宗教や社会規範について考えるようになり、次第に次は小乗仏教の国で働きたいと思うようになりました。その後、幸いにもタイで活動する日系のNGOにポストをいただき、タイに来ることができました。1999年のことです。

タイでは東北部にあるウボンラチャタニ県でのHIV/AIDS感染者への支援・感染予防プロジェクトに従事しました。プロジェクトでは農村コミュニティでの活動に関わることが多く、活動を通じてタイの農村コミュニティの強さに惹かれるようになりました。コミュニティーには主婦グループ、職業グループ、若者グループなどの様々なグループがあり、寺や学校を核にしながら住民が助け合い、主体的に自分達の暮らしを良くしようとしていたんです。農業も例外ではなく、農家が協力しながら田植えや収穫をしていました。地域の強さを肌で感じましたね。とても貴重な体験でしたし、タイという国に強い魅力を感じました。

2002年からはアイ・シー・ネット・アジア社で主に社会開発分野での開発課題に向き合っていますが、このプロジェクトでの学びと経験がその後のコンサルティング業務の原点になっていると思います。

Q: 岩城様は農村の開発へのご関心が高いと存じますが、農業開発と農村開発はどのように異なるんでしょうか?

農業開発は産業開発、農村開発は地域開発ですね。前者は、食物の栽培/家畜の飼育技術、生産性、加工、商品化、マーケティング、食の安全などを含み、後者は地域の内外のリソースを活用した地域住民の生活向上に関することを広く含むと思います。漁業と漁村の関係も同じですね。切っても切り離せない関係です。この点は後述します。

農業開発と農村開発のどちらをとっても、外からの「開発」というよりは内発的な「エンパワーメント」という人に焦点を当てたアプローチが大切だと思っています。農業の場合は、外部のリソースも活用しながら、農業従事者が生産性向上等のために必要な意識・知識・技術を持ち、自発的に取り組んでいくことが重要だと思います。

Q: 国際開発援助や途上国発展の文脈では、農業/農村開発には特にどんな重要性があるんでしょうか?

多くの開発途上国の基幹産業は農業で、農業人口も多いです。また、彼らの生活水準は比較的低いです。確かに都市の貧困もあり、人口流入により都市の課題も深刻化してますが、多くの人が従事する農業と、多くの人が住んでいる農村の開発は国策としても非常に重要だと思います。

農業は農地つまり土地を使って、その土地に住んでいる人々が生産活動を行います。従って、工場などの生産拠点に人が集まる製造業とは違い、農業は地域に住む人々の生計や生活環境も視野に入れる必要があるわけです。この点で、農業開発と農村開発は一体化して考えるべきですし、開発援助を考える際に留意する必要があります。

Q: タイで様々な農業/農村開発コンサルティングをされてきたと思いますが、一つ事例をご教示いただけますか?

IC Net Asia社では開発援助事業や民間企業支援などを行っていますが、身近な案件としては、2011年のタイ大洪水後にJICA(国際協力機構)が行った「農業セクター洪水対策プロジェクト」があります。現地日系企業にも大打撃を与えたあの大洪水ですね。洪水は製造業だけでなく農業にも甚大な被害を及ぼし、JICAがタイ政府の要請を受けて農業分野での洪水対策支援を行いました。具体的にはプロジェクトには、1)牧草地の生産力回復、2)灌漑施設の改修、3)災害に強い農業/農村作り、の3つのコンポーネントがありました。

私は3)災害に強い農業/農村作りの中の「コミュニティー防災」担当として、洪水がもたらす農業・農村地域への影響や被害の要因分析、警報システム・避難システムといった洪水時に必要なコミュニティーの対応、洪水が長引き農作業が不可能になる場合の収入代替活動案の検討などに従事しました。プロジェクトでは、災害リスクを軽減する農業への技術的な提案なども行っており、やはり農業開発と農村開発を一体化してとらえていました。

参考URL: http://libopac.jica.go.jp/images/report/P1000013513.html

大洪水から5年以上が経ち、人々の記憶も薄れていく中で継続的な対策をとることはなかなか難しいと思います。ただ、農業は特に洪水・旱魃・気候変動といった自然環境の影響を受けやすいので、やはり長期的視点に立った対策が重要だと思います。


今回は、開発援助というコンテキストで農業・農村の開発について概念や具体的なプロジェクトを教えていただいた。続くPart 2では、焦点をより「農業」に絞って、タイの農業のこれまでの成果および課題を見つめ直し、さらに岩城様から将来の展望をいただく。また、日本の農業関係者や学生に何に向けてのメッセージもいただいたので是非ご覧いただきたい。

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