N-1SUMMITアグリテックピッチバトル、鮮度維持機能を高めた最新輸送コンテナ『氷感SO庫』が優勝!
先日お伝えしたオイシックス社主催のイベント『N-1SUMMIT』では、アグリテック開発を手掛ける企業が本気でプレゼンする企画『アグリテックピッチバトル』が行われた。
このピッチバトルは、審査員が会場に来た生産者であるというところがポイントだ。生産者は自分が使ってみたいと思った製品に対して投票する。支持を最も多く集めた企業が優勝となる。
参加した5つの企業で優勝に輝いたのは、株式会社ジェイアール貨物・南関東ロジスティクスの『氷感SO庫』だ。
この製品の何が生産者に評価されたのだろうか。実際にプレゼンをした同社トランスポートメディア事業部長の徳重政直氏に取材を行い、その優れた機能に迫った。
氷感SO庫とは?
氷感SO庫は、鮮度維持機能を搭載した特殊12フィートコンテナだ。12フィートコンテナとは鉄道での輸送に用いられるコンテナのこと。これまでは鉄道で生鮮品を輸送する場合、冷凍するしか方法はなく、輸送できるものは限られていた。また冷凍してしまうと、どうしても品質が低下してしまう。
氷感SO庫は、冷凍せずに生鮮品を鉄道で運ぶという、これまで不可能だったことを可能にするコンテナだ。冷蔵したコンテナ内部に高電圧・低電流で静電場を形成することで、凍結点でも凍ることがなく、鮮度を長期間維持することが可能となる。こうすることで、保管と輸送を両立できるのだ。
これまでそのような生鮮品は空輸を用いていたため、コストがかさんでいた。これを鉄道での輸送にするだけでコストが大幅に削減される。例えば、札幌-東京間を飛行機で輸送するには2日程度かかるが、鉄道の場合には2日以上かかる。それでも氷感SO庫で輸送すれば、到着時の鮮度は大差ないと徳重氏は胸を張る。
氷感SO庫の驚くべき成果
氷感SO庫はまだ試作段階だが、すでに驚くべき成果が出ているという。
ユリの花は輸送している間につぼみの状態で出荷したものが開花してしまっていたが、氷感SO庫なら開花しないままで輸送ができるとともに長期間保存できる。開花させたい時にはコンテナから出せば良いだけなので、開花時期の調整が可能となる。
アボカドは時間が経つと柔らかくなってしまうが、氷感SO庫で輸送すればトラックで輸送するのに比べて硬い状態で輸送ができたという。
特に評価されているのが水産品での成果である。従来の鉄道輸送では、水産品は冷凍して輸送しており、品質が低下してしまう。そのため、鮮度を維持した水産品輸送には空輸が一般的だった。しかし、氷感SO庫は氷や保冷剤さえも必要ない。「本当に大丈夫なのか?」と不安になるところだが、実際に北海道から輸送したカニを東京の市場関係者に試食してもらったところ、空輸と変わらない品質だと太鼓判を押されたと徳重氏は話す。もっと鮮度低下の足が早いホタテなどの貝類でも、同様に鮮度は維持されていたということだ。
氷感SO庫がもたらす付加価値
氷感SO庫は輸送だけでもなく、長期間保存するのにも用いることができる。そのため生鮮品では難しかった出荷調整による価格調整ができるようになる。
さらに氷感SO庫を熟成する目的で使用する例もあるのだという。食肉や古米を氷感SO庫に入れて1~2ヶ月保存することで、食味が向上したり食感がよくなったりするのだ。こうすることで付加価値を高められ、価格向上に繋がるという。氷感SO庫は輸送ではなく保存目的であればすでに使用されており、熟成目的で使用している事業者も少なくないのだという。
今後の展望
氷感SO庫の今後の展望を徳重氏に伺った。まず6月以降、東京-札幌間と東京-福岡間で試験的に導入を始めるとのこと。中でも、農作物の中では足が早いと言われるイチゴを5日ほどかけて輸送してみたいと話した。
また国内で生鮮品の鉄道輸送を確立させた後には、船便での使用で海外進出も目論んでいるとのこと。12フィートコンテナでも船便で輸送することは可能だという。
氷感SO庫はすでに現場からは非常に期待されており、輸送業者からの問い合わせが増えているという。徳重氏は、「農業生産者の方にこのコンテナを利用して輸送してほしい」と話す。
輸送コストを下げられるだけでなく付加価値も高められるというメリットが、会場にいた生産者たちの心を掴んだのではないのだろうか。これまで生鮮品輸送では縁のなかった鉄道輸送という方法にスポットライトを当てた氷感SO庫が、今後の食品流通に変化を与えるかもしれない。
氷感SO庫に関するお問い合わせ
株式会社ジェイアール貨物・南関東ロジスティクス
TEL: 03-6683-7070
URL: http://www.jrf-skl.co.jp/contact